病気事典[家庭の医学]

きゅうせいしきゅうたいじんえんしょうこうぐん

急性糸球体腎炎症候群

急性糸球体腎炎症候群について解説します。

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どんな病気か

血尿(けつにょう)、蛋白尿(たんぱくにょう)、高血圧、浮腫(ふしゅ)(むくみ)などを急性に生じる腎疾患(じんしっかん)の総称です。その80~90%が急性糸球体腎炎によるものですが、IgA腎症などの慢性糸球体腎炎が急性に発症する場合も含みます。

原因は何か

急性糸球体腎炎のなかでも小児に最も多くみられるのは、咽頭炎(いんとうえん)や膿痂疹(のうかしん)(とびひ)などを起こすA群β溶連菌(ベータようれんきん)感染症によって引き起こされる溶連菌感染後急性糸球体腎炎です。ほかに黄色(おうしょく)ブドウ球菌(きゅうきん)、肺炎(はいえん)球菌、B型肝炎ウイルス、水痘(すいとう)ウイルス、マイコプラズマなどの感染症も原因となります。

体に入ったこうした病原体の成分が、直接腎臓(じんぞう)の糸球体を障害する場合や、病原体に対する免疫反応によって糸球体が障害されることなどが原因として考えられていますが、はっきりとした機序(仕組み)はわかっていません。

症状の現れ方

溶連菌感染後急性糸球体腎炎は2~12歳の小児に多い病気ですが、成人にもみられます。典型的には、咽頭炎や皮膚の感染症にかかった1~4週間後に、突然尿量が減り、コーラ色~褐色調の血尿、浮腫および高血圧が出現します。まれに急激な血圧の上昇のためにけいれん、嘔吐(おうと)などを伴う場合があります。

典型的な色の血尿は発症2週までの急性期にみられますが、徐々に改善し、その後顕微鏡(けんびきょう)的血尿が数カ月続きます。急性期には蛋白尿を伴うことも多いですが、通常は軽度です。尿量の減少や浮腫は腎機能障害によるものですが、90%前後の方は腎機能の後遺症を残すことなく回復します。

IgA腎症などの慢性糸球体腎炎が、感冒(かんぼう)(かぜ)をきっかけに急性に発症したり増悪した場合に同様な症状がみられる場合があり、注意が必要です。

検査と診断

尿検査では、コーラ色~褐色調の尿中に変形した赤血球が多数見られます。溶連菌感染後急性糸球体腎炎では、血液検査でA群β溶連菌に対する種々の抗体価の上昇がみられます。また、急性糸球体腎炎の90%の方で免疫蛋白である補体価(ほたいか)が減少します。これらの検査にあわせて、高血圧がみられれば、ほぼ溶連菌感染後急性糸球体腎炎と診断されます。その他、血液検査で腎機能障害の指標となる尿素窒素(にょうそちっそ)やクレアチニン値の上昇がみられることがあります。

溶連菌感染後急性糸球体腎炎と診断されれば、その後の経過は良好な場合が多く、腎生検(じんせいけん)(腎臓の一部を針で採取する検査)を行うことは通常ありませんが、腎機能障害や検査所見の異常が長く続く場合や、強い蛋白尿がみられる場合には、慢性糸球体腎炎など他の疾患を区別するために腎生検を行う場合があります。

治療の方法

溶連菌感染後急性糸球体腎炎の治療の基本方針は安静ですが、症状が強い時期には入院治療が必要です。尿量が少なく、強い浮腫や高血圧がみられる時期には塩分・水分摂取をひかえ、利尿薬を用います。とくに高血圧は頭痛、嘔吐、けいれんなどの重い症状を引き起こすことがあるため、利尿薬で十分に効果がみられない場合は、降圧薬を併用します。

腎機能障害が強く、薬物療法でも浮腫や高血圧、血液電解質(けつえきでんかいしつ)の異常が改善しない場合には、一時的に透析(とうせき)治療が必要となることがあります。

腎機能が改善するのにしたがって、徐々に尿量は増え、薄い尿が多量にみられる時期があります。この時期はむしろ脱水に注意が必要です。むくみ、高血圧などの症状が改善すれば、塩分や水分制限は不要となり退院も可能となります。軽度の尿所見の異常が続く場合がありますが、比較的早くから登校など通常の日常生活にもどることができます。ほとんどの場合は、後遺症なく改善します。

病気に気づいたらどうする

入院可能な病院の小児科を受診してください。

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