病気事典[家庭の医学]
せいそうそんしょう
精巣損傷
精巣損傷について解説します。
執筆者:
神奈川県立がんセンター泌尿器科医長
岸田 健
どんな病気(けが)か
精巣は何層もの膜に包まれ、厚い皮膚の陰嚢(いんのう)のなかに入っていますが、体外に突出しているため外傷を受けやすい臓器です。単なる打撲や内出血程度の軽いものから、精巣がつぶれてしまったり、陰嚢の皮膚が破れて精巣が外に飛び出してしまうものまであります。また、精巣の周囲には尿道や膀胱、骨盤の骨などがあり、これらの損傷を伴うことも多くあり、注意が必要です。
症状の現れ方
男性なら誰でも経験があるように、精巣は単なる打撲でも激しい痛みと下腹部痛や吐き気を引き起こします。単なる打撲であればすぐに痛みはおさまりますが、精巣や血管の損傷を伴っていれば、内出血を起こし陰嚢は赤黒くはれ上がってきます。内出血は時には皮下を通って陰茎や下腹部、肛門のほうにまで広がることもあります。外傷からの感染を伴えば発熱などの全身症状を示します。
強い外力を受けると精巣がつぶれてしまったり、圧迫されておなかのほうに引っ込んだままもどってこなくなったり、陰嚢の皮膚が破けて精巣が外に飛び出してしまうこともあります。
検査と診断
触診、エコーなどで精巣そのものの損傷の有無を判定します。また、尿道、膀胱、精索(せいさく)、骨などの周囲の臓器の損傷の有無も調べます。このため、造影検査やCTなどを行うことが必要な場合があります。
治療の方法
単なる打撲で精巣がつぶれていなければ、安静と局所の冷却ではれや内出血は自然におさまっていきます。出血が多く血腫が大きい場合や皮膚の傷を伴う場合は、細菌感染のもとになる可能性があり、皮膚を一部切開してドレーンという管を入れます。その後、感染予防のために抗生剤を内服します。損傷が激しく、精巣が激しくつぶれていれば、反対側の精巣へ悪影響を及ぼすおそれもあることから、摘出しなければなりません。
病気に気づいたらどうする
痛みが強くても、数分以内におさまれば様子をみて大丈夫です。痛みが続き、はれてくるようであれば、泌尿器科を受診してください。
情報提供元 :
(C)株式会社 法研
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