病気事典[家庭の医学]

ろうねんきのりはびりてーしょん

老年期のリハビリテーション

老年期のリハビリテーションについて解説します。

執筆者:

老年期には常にリハビリテーションの心(マインド)を

「老年者は病気が治っても必ずリハビリテーションを」といわれているのは、老年期に生じた病気のあとは誰でも体の不自由さが残るからです。老年期のリハビリテーションは医療で行われるばかりでなく、介護保険でも必要ですし、また自分で工夫して行うことも大切です。

一般的に医療は、薬や手術により受け身の形で病気を治すものですが、これは空腹時に魚を与えてもらい満腹になるのと似ています。一方、リハビリテーションは魚取りの術を積極的に覚え、生涯空腹にならないようにするものです。

リハビリテーションという魚取りの術は老年者の病後、老化に伴う衰え、老年期特有の症状である老年症候群による衰え、体を使わないで生じる廃用症候群(はいようしょうこうぐん)による衰え、などによる生活機能の低下を少なくし、改善できます。これらの点から老年期には常にリハビリテーションの心(マインド、気持ち)をもっていただきたいものです。

元気高齢者から要介護・障害高齢者まで

図3は約80%を占める元気高齢者、残りの虚弱高齢者・要支援高齢者・要介護高齢者・障害高齢者、それぞれに対するリハビリテーションの目的や内容を示したものです。

老年期には加齢に伴う生理的な体の衰え、感染しやすい・白内障難聴など老年期特有の老年症候群による衰え、毎日の活動量の低下による関節の動きにくさ・立ち眩(くら)みなど体を動かさないことによる廃用症候群による衰え、などで徐々に生活機能が低下します。老年期に多い脳卒中、骨折、心筋梗塞(しんきんこうそく)、慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん)などは麻痺や筋力低下、閉じこもりをまねいて生活機能を著しく低下させます。

生活機能の低下に対して、元気高齢者では健康増進、虚弱高齢者や要支援高齢者では介護予防、要介護高齢者では自立度向上、病後の障害高齢者では病気・障害の受け入れと克服、などのため毎日の生活で、また介護に関わる施設で、そして医療機関でリハビリテーションを行うこと、すなわち魚取りの術を覚えることが必要です。

どのような内容でリハビリテーションが行われるか

元気高齢者や虚弱高齢者・要支援高齢者では筋力の衰えや膝の痛み、腰痛など運動器の病気で生活機能が低下しがちです。これらをロコモティブシンドローム、それが高度になった場合に運動器不安定症といい、筋力アップで対応します。

要介護高齢者や障害高齢者では、介護施設・事業所でケアマネジャーの計画に基づいて自立度を高めるリハビリテーションが行われます。医療機関では、各病気に合わせて回復目的のリハビリテーション医療が行われ、リハビリテーション医療の後には維持的リハビリテーションを自分で、または介護保険で行われます。

老年期には常にリハビリテーションの心をもって生活機能を上げ、誰もが「成功した老年期(サクセスフル・エイジング)」であったと実感したいものです。

情報提供元 : (C)株式会社 法研 執筆者一覧
掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。