病気事典[家庭の医学]

かんぽうやくののみかた

漢方薬の飲み方

漢方薬の飲み方について解説します。

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解説

おそらく多くの病院や薬局では、漢方薬は「食間」、つまり食事と食事の間の空腹時に服用するように指示されていることと思いますが、実は、作用の強いものなどを除いて、いつ飲んでもかまいません。これは、西洋薬についてもまったく同じことがいえます。

漢方ではあまり問題としませんが、西洋医学的に考えると、有効成分の血中濃度が24時間で同じようなカーブを描くことが理想的で、それには1日3回のお薬なら8時間ごとに飲むのがよいということになります。しかし、現実にはなかなかそのとおりにはできません。ですから「食後」としているのですが、そうすると、おかしなことも起こってきます。それは、忙しすぎて食事が摂れなかったから薬も飲みませんでした、というようなことです。これでは逆効果になってしまいます。

漢方薬を飲むのは「食前」がよいでしょう。漢方薬は作用が穏やかなものが多いので、胃のなかにあまり多くのものが入っていないほうが、効き目が速いのです。もし西洋薬といっしょに処方されているようなら、食前に漢方薬を飲み、食後に西洋薬を飲むとよいでしょう。

注意が必要な時もあります。それは異なるお医者さんから別々に、西洋薬や漢方薬が出されている時です。一人の医師から処方される場合は問題ありませんが、もともと西洋薬は臓器の機能を抑制するものが多く、逆に漢方薬は本来の機能を助けるものが多いので、お互いの作用が相殺される場合があります。

これは西洋薬同士についてもいえることなので、西洋薬だろうと漢方薬だろうと、複数の医師から薬が処方される場合、両者にあらかじめお話しになっておくことをすすめます。もし忘れた時は、調剤する薬剤師に相談するとよいでしょう。

漢方薬の飲み方には直接関係ありませんが、ひとつ覚えておくとよいことは、飲みはじめた漢方薬の煎(せん)じ液の「味」です。

漢方処方は患者さんのその時点の体内バランスの乱れ、すなわち「証」に合わせて設計されますが、仮にそれが合っていないと、味が苦かったりまずかったり、ひどい時は吐き気がします。

「証」は患者さん本人の訴えや記憶をもとに推考していくので、本人の主観などで変化しやすく、ずれることがあります。したがってそのような時はすぐに、薬剤師か主治医に相談してみてください。何かを"加減"して味がおいしくなれば「証」に合ったということになります。

"漢方薬は食事"と考えられるようになると、煎じる手間を感じなくなります。

「医食同源」という言葉がありますが、これは薬も食べ物も源は同じなので、たくさんの種類の食べ物を少しずつ食べることがよい、という意味です。本来は「薬食同源」というほうがわかりやすいでしょう。

適度なストレスのもとにバランスのとれた食事を摂って健康が保たれていれば、本来、薬はいらないわけです。植物も動物も生薬ですから、それをいろいろ組み合わせた料理は漢方薬そのものといえます。そう考えることによって、漢方薬を身近に感じることができます。

漢方薬の服用を中止する時のポイント

西洋薬と違い、漢方薬は飲むのをやめても問題はありません。ただ、「証」に合っている場合は途中でやめる必要がないわけですから、中止する時は体が元の元気な状態にもどっていることを、「証」の状態を診てもらって確認されたほうがよいでしょう。

しかし元気になると同じものを続けて飲みたくなるのが人情ですが、実はそうはなりません。なぜなら、元にもどす処方と、またそうならないように予防する処方とでは同じにはならないからです。

元気な状態を維持するには食事でコントロールするようアドバイスしますが、希望すれば漢方薬を処方することもできます。

昔の中国の皇帝にはいわゆる侍医(じい)、おかかえの医師が何人もいましたが、その中でいちばん位が高かったのは「食医(しょくい)」で、その次が内科医、外科医、獣医の順だったのです。食医とは、薬を使わず食べ物だけで皇帝の健康を維持し続ける、最高レベルの医師であり、内科医は薬を与えてよくする医師です。

そういった歴史からもわかるように、食事で健康状態をコントロールできるのが本来の医師、薬剤師の本領といえます。そしてその考え方が、漢方の基本となる考え方なのです。

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