病気事典[家庭の医学]

じんじょうせいかんせん

尋常性乾癬

尋常性乾癬について解説します。

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どんな病気か

乾癬とは、皮膚が赤くなって盛り上がり、表面に雲母(うんも)のような白い垢(あか)が厚く付着して、その一部がポロポロとはがれ落ちる病気です。まわりの人にうつる病気ではありません。

尋常性とは「普通の、ありふれた」という意味です。つまり普通の乾癬という意味で、乾癬のなかではいちばん患者さんが多い病気です。

欧米白人では有病率が3%と高いのですが、日本では有病率が0・1%前後で、10万人以上の患者さんがいると推定されています。また、戦後は右肩上がりに増加傾向にあります。男女比は2対1で男性に多く、主に30~40代に発病します。女性では、10代と50代の発病が多いともいわれています。

原因は何か

乾癬の起こる原因はいまだはっきりとしていません。血縁の家族に乾癬がみられる場合があり、体質が発病に関係しているようですが、日本の調査では、家族内に乾癬の人がいる場合は5%と多くありません。

乾癬が起きやすい体質に、扁桃腺炎(へんとうせんえん)などの感染症、薬物、外傷などの外的因子や、肝臓病や糖尿病、ストレスなどの内的因子が複雑に絡み合って発病したり、悪化したりすると考えられています。戦後に増加した病気であり、もともと欧米人に多い病気であることから、食事の西洋化が関係しているのではと類推されています。

症状の現れ方

一つ一つの発疹は、にきびのような赤いぶつぶつで始まり、だんだんまわりに拡大するとともに厚い垢をもつようになり(図25)、ある時を境に(その時の大きさは一定していません)よくなって消失するということを繰り返します。

乾癬はケブネル現象といって、こすったり傷ついたりしたところに数日してから新しい発疹が出てくることがあります。したがって、体のなかでよくこすれる部位である肘(ひじ)や膝(ひざ)、尻、頭などから発疹が出てきたり、あるいは発疹がひどい傾向にあります。このように、よくなったり悪くなったりを年余にわたり繰り返す経過の長い病気です。

爪が白く厚ぼったくなり、爪水虫(つめみずむし)と間違われる場合もあります。何かのきっかけで急に悪化する場合には、膿疱性(のうほうせい)乾癬関節症性(かんせつしょうせい)乾癬といった重症型になることがあります。

検査と診断

診断は、特徴的な発疹とその分布、経過より判断します。通常は内臓の異常はありませんが、時に糖尿病高血圧、肝臓病を合併していることがあるので、検査で確認することが必要です。また、薬の副作用で乾癬のような発疹が出てくることもあります。

治療の効果がみられない場合や経過の長い場合は、発疹の一部を切って顕微鏡で調べる組織検査を行うと診断が確定します。

治療の方法

外用薬、内服薬、光線療法などさまざまな治療法があります(表2)。症状が軽い場合には主に外用薬によって、症状が重くなると内服薬や光線療法で治療します(図26)。

外用薬には、ステロイド薬が多く用いられています。そのほか、活性型ビタミンD3外用薬もステロイド薬ほどの速効性はありませんが、副作用が軽微なので併せて使用します。古くから用いられてきた外用薬にタールやアンスラリンなどがありますが、現在は一部の病院でしか使用されていません。

内服薬としては、ビタミンA類似物質であるエトレチナート(チガソン)や免疫抑制薬であるシクロスポリン(ネオーラル)が用いられ、一定の効果が得られています。

光線療法は、紫外線の増感剤であるメトキサレン(オクソラレン)を発疹部に塗り、紫外線をあてる治療で、PUVA療法といいます。乾癬が全身にある場合、入院して内服のメトキサレンを使用してPUVA療法を行う場合もあります。近年、PUVA療法に代わる光線療法として、乾癬に効果が高いということが検討された特定の紫外線波長を利用したナローバンドUVB療法が利用されるようになってきています。このナローバンドUVBを特定の部位に照射するレーザーも開発され使用されています。

近年、生物学的製剤も使われ始めています。生物学的製剤とは最新のバイオテクノロジー技術を駆使して開発された新しい薬で、生物が産生した蛋白質を利用してつくられています。体のなかで炎症を起こす物質を直接それに対応する抗体によって除去できる治療法で、関節リウマチに絶大な効果を示しています。とくに関節症性乾癬など、関節リウマチと病態が似ている病気にはよく効きます。

いずれの治療も一長一短があるため、うまく組み合わせて症状をコントロールすることが大切です。

病気に気づいたらどうする

近くの皮膚科専門医のいる医療機関を受診し、治療法を相談します。また、重症の場合には入院治療が必要なこともあります。

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