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薬をめぐるトピックス

いまだに落ち着かない医薬品の流通問題

2023年のこのコラムも、同じ表題で書き始めていました。2022年のこのコラムでも、2021年12月にマスコミが取り上げ始めたことから、関連することを取り上げています。

2020年に発生した小林化工の事件(抗真菌薬に睡眠薬の成分が混入)による他の製薬会社の自主点検結果が残念な状況だったことから、大丈夫であった製薬会社に製造量を超える注文が入ることとなり、やむをえず始まった出荷調整でしたが、新型コロナ感染症による症状緩和用の薬品不足が重なり、日本中に薬不足が広がりました。

当初、半年後には元に戻るような雰囲気でしたが、それが「1~2年はかかる」に変わり、なぜかいつまでたっても「あと1~2年」の話が変わらず、先が見えない状況が続いています。

東日本大震災の時、あすか製薬いわき工場が被災し、国内シェア98%であった甲状腺ホルモン薬のチラーヂンSの製造がストップしました。経腸栄養剤のエンシュアリキッドは、製造工場自体は無事だったものの、容器である缶の製造工場が被災し、製品の製造ができない状態になりました。この時は一時的な緊急輸入で海外製造の製品が流通したりもしましたが、半年以内に製造は再開され、流通も復旧しました。

この経験があったので、まさか4年たっても元に戻らないという状況を想像できず、「そのうち何とかなる」と思っているうちの出来事でした。

国のスタンスは、製薬会社個々の問題ということなのでしょう。現象的には確かにそうなのですが、4年たっても復旧しないというのでは、行政機関としてやらなければならないことが何か欠けているのではないかと思ってしまいます。

本稿を書いているのは6月30日で、能登半島地震が発生してほぼ半年がたっていますが、今日のニュース番組で、半年経過したにもかかわらず被災した家屋の解体がほとんど進んでいない状況を報道していました。筆者には、全く好転しない医薬品流通問題と重なって見えます。

患者さんが処方箋を薬局に持ち込んだ時に、在庫のない薬品が処方されていた場合、以前でしたら「お取り寄せして、いついつまでにお届けします」と即答していましたが、今現在、問屋の在庫を確認してからでないと引き受けることが可能かどうかの返事もできません。問い合わせ先の問屋も昨今の労働時間問題もあり、定時以降は電話対応すら翌営業日となるので、金曜日の夕方以降にそんなケースが発生すると、翌週にしか返事ができないといった状況に陥ります。

2024年の薬価改定

2021年4月から薬価改定はそれまでの2年ごとから1年ごとになったので、2024年4月も実施されました。今回の改定では、長期収載品といわれる特許が切れてからの期間が長い先発医薬品が、大きく価格を下げられていたのが目立ちました(表1参照)。

メバロチン、リピトールのようなHMG-CoA還元酵素阻害薬や、ノルバスクやアジルバといった高血圧症の薬の薬価が大きく下がっているのがわかります。先発医薬品と後発医薬品(ジェネリック)の価格差がほとんどなくなっているものも多く、中にはトコフェロールニコチン酸エステルのように逆転してしまったものさえあります。

一方で、抗生物質で見かけるのですが、後発医薬品の価格が上がって先発医薬品に並んだものが見受けられます。ここまで来ると、何のための後発医薬品なのか筆者の理解を超えています。

一方、原材料を輸入に頼る漢方薬などは、使われている生薬の種類によっては50%以上の値上がりになったものも少なくありません。中国での生薬の需要が増しているなかでの円安ですから、今後も上昇する可能性は高いといえます。

ここからは薬局の愚痴になりますが、3月31日も4月1日も医療は連続していますので、3月31日に「在庫がゼロ」とはなりません。今回の改定では3月31日時点の在庫が一晩で約1%目減りするということになります。あくまで平均でですので、表1にあげたアジルバ20mgが200錠あったとすると、その部分だけ見れば(140.1-83.3)×200=11,360円の評価損が出たことになります。今年度は約1%の値下げでしたが、昨年度(2023年4月改定)は約6%の値下げでした。

長期収載品と選定療養について

さて、医薬品の流通問題がいつ解決するか見通しもはっきりしないこの時期ですが、2024年10月から、「医療上の必要性がないにもかかわらず、患者が『後発医薬品でなく先発品(長期収載品)を使いたい』と希望した場合には、両者の差額の4分の1を患者自身が負担する仕組み(選定療養)」が導入されます。

選定療養とは、本来は保険治療と併用できない保険適用外の治療を、社会保険に加入している患者が追加費用を負担することで、保険適用外の治療を保険適用の治療と併せて受けることができる仕組みです。

この選定療養の対象となる長期収載品は、「後発品のある先発医薬品(いわゆる「準先発品」を含む)であって、次のいずれかを満たし(詳細は省略)、当該長期収載品の薬価が最も高い後発品の薬価を超えているもの」とされています。

新たな負担額として、(長期収載品の金額)-(対応する後発品の金額)×(1/4)と示されていますが、頓服薬や外用薬であれば、医療保険上も1つの処方で医薬品の総額を10円単位にまとめる方式ですので、問題なく答えは出てきます。しかし、内服薬の場合、医療保険では1日単位の薬価を求め、それを10円単位にまとめて日数分を乗ずるやり方で計算します。その場合、選定療養の対象となるケースで、例えば表1(薬価の変遷)で例示したメバロチン10mgが1錠のみの処方の場合では、
1日薬価で見てみると
 ・長期収載品:
  22.6円(医療保険上20円)
 ・対象後発品:
  20.0円(医療保険上20円)
総額方式で90日処方の場合では
 ・長期収載品:
  22.6×90=2,034円
 ・対象後発品:
  20.0×90=1,800円
と考えられるのですが、実施3カ月前を切った7月初旬現在、どのように計算するのかの指定がありません。

最近では安定した患者さんには90日分以上の処方箋が発行されることもしばしばあり、そのような患者さんには前もって説明する時期ですが、今の状況では10月から負担が増えるということは言えても、具体的な数字をあげて説明することができません。このような余計な混乱の元をまき散らしてほしくありません。

オーバードーズ(OD)問題と医薬品販売

厚生労働省がホームページでオーバードーズについて公表しています。曰く「近年、風邪薬や咳止め薬などを、本来の効能効果ではなく、精神への作用を目的として、適正な用法用量を超えて大量に服用する『オーバードーズ』が若者を中心に拡がりつつあります。」と状況の説明などがあり、薬剤師・登録販売者あてにしっかり対応するよう求める文言もみられます。

その一方で、医薬品販売制度に関わる法改正を議論する厚労省制度部会では、濫用リスクのある薬の取り扱いに関して、陳列の配慮や販売記録の導入が検討されています。それに関しては、日本チェーンドラッグストア協会の副会長が「2014年以降に(依存薬物として)市販薬が急増したのは危険ドラッグが規制された影響と考察される。安易に市販薬を規制するだけでは、他の成分の濫用や非合法な手段へシフトするだけではないか」と問題提起したという記事が薬局新聞に載っていました。

そもそも要指導医薬品、第一類医薬品は別にして、多くの薬品が販売されているのがドラッグストアである現状は確かです。そして、好ましくない使用方法を可能にしている材料を提供しているのは、やはり多く薬品を販売しているドラッグストアと考えられても仕方ありません。しかも現状、薬剤師や登録販売者が法律の範囲内で販売していてもオーバードーズが起こるのであれば、さらなる規制を設けるのは仕方ないと感じます。

そもそも安全性よりも利便性を追い求めた規制緩和が先行し、薬剤師ではない店舗管理者なる資格を作り、薬剤師がいなくても店舗運営が可能なようにしたのですし、医薬品のネット販売に関してもできるようになっています。

そこで、安全性の担保をどう求めるのかという話ですから、どこかで歯止めが必要ですし、鎮痛薬や風邪薬などの治療用医薬品とビタミン剤などの保健医薬品は明らかに性格が異なるものですから、本人確認などの販売制限が設けられたとしても許容範囲だと思います。

肥満治療薬

今まで肥満治療薬として保険医療で使用できたのはサノレックス錠0.5mg(一般名マジンドール)のみでした。これは向精神薬に指定されていて、しかも使用限度が3カ月となっているなど、あまり使い勝手の良いものではありませんでした。

2024年2月に、自己注射が可能な肥満症治療薬としてウゴービ皮下注SD(一般名セマグルチド)が発売されました。ただし、保険適用があるのは、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかがありBMI 35以上、もしくは27以上で2つ以上の肥満に関連する健康障害(上記と同様)を有する人となっています。

実際にやせたいと思っているのは、筆者の目から見てややふっくらした程度の健康な方が多いようで、そのような人は保険治療の対象ではありません。その需要に応えているのが自由診療・自費治療でウゴービあるいは同じ成分の内服薬リベルサス錠(糖尿病薬として認可)を提供する医療機関で、インターネットで検索するとオンライン診療や薬の直送などをうたっています。

自由診療にて希望する方がとても多いようで、保険診療の糖尿病薬としてのリベルサス錠、オゼンピック皮下注(ウゴービと同じ成分で、糖尿病薬としてのみ認可されている)の供給が圧迫されるような状況が起こってしまっています。普通に考えて「本末転倒」という言葉が出てきますが、法律的にはそういった自由診療を止める手立てはないようです。

OTCの肥満治療薬アライ

さて、2024年4月、内臓脂肪減少薬アライ(一般名オルリスタット)がダイレクトOTCとして発売となりました。ダイレクトOTCとは、日本で医療用医薬品としての実績がない状態で直接一般用医薬品(OTC)として販売されるものです。

オルリスタットは、この本の海外評価の対象としている英米独仏の各国で医療用医薬品あるいはOTC医薬品として承認されていますから、効果の実績は申し分ありません。

オルリスタットは本来消化吸収される脂肪分の吸収を阻害する作用があり、吸収されなかった脂肪分がそのまま排泄されるので、食事内容などにより脂肪便となるなどといった副作用があります。要指導医薬品ですので、購入前に薬剤師からチェックシートを用いての説明があり、それに納得してから初めて購入が可能となります。

20以上のチェック項目をパスして初回購入しても「食事・運動の改善(生活習慣の改善)の取り組みは継続してください。継続できない場合、本剤はご使用いただけません。」との文言があり、生活習慣記録の記載など継続使用にチェックがかかるようになっています。オンライン診療でGLP-1受容体作動薬(リベルサス、ウゴービ)を手に入れるよりもハードルは高いかもしれません。

表1 主な薬剤の薬価の変遷

[処方薬]は、株式会社 法研から当社が許諾を得て使用している「医者からもらった薬がわかる本 第33版(2024年7月改訂デジタル専用版)」の情報です。掲載情報の著作権は、すべて 株式会社 法研 に帰属します。

データ更新日:2024/10/15