医療特集
脳卒中について - リハビリは早期開始が重要
更新日:2017/04/13
脳卒中を発症したときのリハビリテーションと、脳卒中を予防するために心がけることについて伺いました。
お話を伺った先生:
NTT東日本関東病院 脳神経外科部長 脳卒中センター長兼任
井上 智弘(いのうえ ともひろ)
リハビリテーション(リハビリ)
術後に長い間動かないでいると廃用性症候群(はいようせいしょうこうぐん)といって、筋肉量や体力が落ち、関節が固まって動きにくく、骨も弱くなります。高齢者では認知症の恐れもあります。廃用性症候群を防ぐためには、リハビリの早期開始が重要です。
また、脳卒中の発症から早期に適切なリハビリを行えば、ある程度の機能を回復させることができます。患者さんの容態にもよりますが、可能な範囲で早期から介入できると、予想したよりも目覚ましい回復が得られる場合もあります。可能であればなるべく早めにリハビリを始めることが勧められます。
急性期のリハビリテーション
急性期とは、発症から基本的には1カ月程度の期間を指しますが、患者さんの疾患や状態によって専門的に判断されます。この時期には、治療と並行してリハビリが始められます。
回復期のリハビリテーション
急性期の治療を終えると回復期の病棟や病院に移り、回復期リハビリを行います。回復期リハビリでは、生活機能を高めるための訓練を引き続き行います。
なお、回復期として病院に入院できるのは、疾患により発症から最長180日と決められています。
リハビリに関わる専門職
一口にリハビリといっても、抱える問題は患者さんごとに多岐にわたります。このため、さまざまな医療専門職が連携して患者さんの回復をサポートします。以下、リハビリに関わる専門職をご紹介します。
理学療法士(PT)
運動機能の回復訓練を行います。また、温熱療法などの物理療法も行います。
作業療法士(OT)
食事や入浴、着替え、トイレなどの日常生活動作(ADL)がスムーズにできるよう訓練を行います。また、記憶ができない、注意が持続しない、計画して行動できないといった症状のある「高次脳機能障害」の回復訓練も行います。
言語聴覚士(ST)
読む・書く・話すといった言語能力の障害やろれつが回らないなど構音障害の回復訓練を行います。また、食べ物などがうまく飲み込めない「嚥下障害」や高次脳機能障害の訓練も行います。
介護福祉士(ケアワーカー:CW)
入院中の生活やリハビリの付添いをはじめ、身近な存在として身の回りの様々なサポートを行います。
医療ソーシャルワーカー(SW)
回復期病院の紹介や調整、社会的な支援などの相談・橋渡しを行います。
脳卒中の予防
脳卒中の予防のために、動脈硬化になりにくい生活習慣を心がけましょう。動脈硬化の要因としては、高血圧のほか、糖尿病、脂質異常症、喫煙、大量飲酒、運動不足、肥満などが挙げられます。また、脳卒中の原因となる疾患の治療が必要となる場合もあります。
リスクとなる生活習慣など
体調や急な温度の変化などが脳卒中の発症するきっかけとなることがありますが、その遠因となっているのは生活習慣病との関連です。特に高血圧や動脈硬化は、脳卒中を引き起こす原因となります。
生活習慣に関連するもののうち、喫煙と高血圧は、脳梗塞と脳出血両方のリスクとなり最も避けなければならない要因です。また、飲酒は主に脳出血の発症因子となります。脳卒中のリスクは年をとるほど高くなるので、高齢者は特に生活習慣に気を配る必要があります。
また、両親など1親等の肉親が脳動脈瘤と診断されている場合、40歳を過ぎたら、1度は脳のMRI検査を受けたほうがよいといわれています。
「日頃からの予防を心がけることは大切ですが、それでも脳卒中にかかることはあります。危険な因子があればなるべく早めに医師と相談して治療していくことが大切です」(井上先生)
脳卒中を予防する治療
心疾患のひとつである心房細動は、脈が不自然に速くなる不整脈の一種で、心原性脳塞栓症を引き起こす重要な要因です。時々しか現れない心房細動もありますが、心電図検査などで見つかったら、予防のための薬を服用することもあります。
脳動脈瘤が未破裂の状態でみつかったら、予防的にクリッピング術やコイル塞栓術を行うことがあります。大きければ大きいほど破裂する危険が増すので、学会の基準では5mm以上、そして70歳以下で行うのが原則です。
脳卒中の前兆を見逃さない
「突然すごく頭が痛くなったが、すぐに治まった。ろれつが回らなかったり言葉がうまく思い浮かばなかったりという症状が、しばらくたったら治った。このような症状は、脳卒中の前兆かもしれないということを知っておいていただき、とにかく速やかに受診してください」と、井上先生は強調します。
本人もそうですが、家族など周囲の方が一過性脳虚血発作などの小さな症状を見逃さないことが、水際での予防といえるかもしれません。
NTT東日本関東病院 脳神経外科部長 脳卒中センター長兼任
取得専門医・認定医
- 日本脳神経外科学会専門医
- ECFMG certificate
- 医学博士(東京大学)