病気事典[家庭の医学]

しつがいこつこっせつ

膝蓋骨骨折

膝蓋骨骨折について解説します。

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どんな外傷か

膝の外傷のなかで比較的よくみられる骨折です。膝蓋骨は膝関節(しつかんせつ)の前面にあって膝の皿ともいわれ、皮膚のすぐ下に触れます。膝を曲げた位置から伸ばす時に重要なはたらきをしているので、骨折すると膝を自動的には伸ばせなくなります。

原因は何か

転倒や交通事故で膝の前面を直接ぶつける(直達(ちょくたつ)外力)ことで起こります。また、スポーツなどで膝を伸ばす大腿四頭筋(だいたいしとうきん)が急激に強く緊張する(介達(かいたつ)外力)と、膝蓋骨は中央で上下の2つに割れて横骨折(おうこっせつ)となります。

症状の現れ方

強い痛みと膝関節の腫脹(しゅちょう)(関節血症)があり、膝を自動的には伸ばせません。

検査と診断

診断は、外傷を受けた時の状況や症状およびX線検査で比較的容易にできます。診断として難しいのは、まれにみられる膝蓋骨骨軟骨(しつがいこつこつなんこつ)骨折とスリーブ骨折です。

膝蓋骨骨軟骨骨折は若年の女性に多い膝蓋骨脱臼に伴うもので、膝蓋骨の内側に小さな骨片がみられます。スリーブ骨折は10歳前後の子どもに多い膝蓋骨下端の剥離(はくり)骨折で、骨片が小さく見逃されることがあります。

骨折と紛らわしいものに分裂膝蓋骨(ぶんれつしつがいこつ)があります。X線像で膝蓋骨の上外方に骨折線のようにみえますが、腫脹や関節血症はありません。

治療の方法

骨片の離開のない場合は手術は不要で、保存的にギプスによる外固定を3~5週間行います。

介達外力で骨片が上下に離開した横骨折では、手術的にキルシュナー鋼線とワイヤーで固定します。術後はギプス固定は不要で、早期に膝のリハビリテーションを開始します。

直達外力で膝蓋骨前面の皮膚が破れて開放性骨折となった場合は、緊急手術で感染に対する処置が必要になります。

治療成績は、単純な骨折では比較的良好です。しかし、開放性骨折や骨片がバラバラに粉砕された骨折、大腿骨下端や脛骨(けいこつ)中枢端の骨折に合併した場合は、膝関節可動域の減少を残すことがあります。

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