病気事典[家庭の医学]
がいしょうせいきょうぶあっぱくしょう
外傷性胸部圧迫症
外傷性胸部圧迫症について解説します。
執筆者:
日本医科大学千葉北総病院救命救急センター長・教授
益子邦洋
どんな外傷か
外傷性胸部圧迫症は、外傷性仮死(かし)、外傷性窒息(ちっそく)、胸部圧迫顔面溢血(いっけつ)症候群などとも呼ばれてます。
声門が閉じた状態の時に、胸部に大きな外力が加わると、静脈内の圧が著しく高くなり、頭頸部(とうけいぶ)や肺の小静脈や毛細血管が破綻(はたん)します。その結果、独特の顔貌(がんぼう)(図40)とともに、意識障害や肺におけるガス交換障害に起因する低酸素血症(ていさんそけっしょう)が生じる病態です。
症状の現れ方
顔面・頸部(首)の点状出血とチアノーゼ(皮膚などが紫色になる)、舌や口唇の腫脹(しゅちょう)、眼瞼結膜(がんけんけつまく)の点状出血、意識障害などです。
肋骨(ろっこつ)骨折や肺挫傷(はいざしょう)を伴う場合にも、これらの症状が出現します。
治療の方法
外傷性胸部圧迫症自体に対する治療はとくにありません。
意識障害があれば気道の確保、低酸素血症があれば酸素吸入や人工呼吸療法、血胸(けっきょう)や気胸(ききょう)を合併していれば胸腔ドレナージ(コラム)など、症状に見合った治療を行います。
応急処置はどうするか
意識障害を伴っていることが多いので、気道の確保が重要です。回復体位(側臥位(そくがい):横を向いて寝る)をとらせて、舌根が沈下することによる気道閉塞(きどうへいそく)を予防します。
呼吸運動が十分でないと判断した場合は、負傷者を仰臥位(ぎょうがい)(あお向け)とし、口対口人工呼吸を開始します。
呼びかけに対して反応が認められなければ、ただちに心肺蘇生法(しんぱいそせいほう)を開始することが必要です。
- 外傷を小分類から探す
外傷の項目を読んだ人によく読まれている記事
情報提供元 :
(C)株式会社 法研
|
執筆者一覧
掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。