病気事典[家庭の医学]
こうげんびょうのげんざいのもんだいとあたらしいちりょうほう
膠原病の現在の問題と新しい治療法
膠原病の現在の問題と新しい治療法について解説します。
執筆者:
京都大学大学院医学研究科臨床免疫学教授
三森経世
膠原病の現在の問題
全般的な生命予後が向上する一方で、依然として治療法が確立していないために死亡率が高く、または重い障害を残すような難治性病態がクローズアップされるようになりました。
このような障害としては、全身性エリテマトーデスの重症腎障害、中枢神経症状、肺胞(はいほう)出血や、強皮症の線維化病変、ステロイド抵抗性筋炎、膠原病に合併する間質性(かんしつせい)肺炎や肺高血圧症、結節性多発動脈炎やウェゲナー肉芽腫症などの全身性血管炎、劇症型抗(げきしょうがたこう)リン脂質抗体(ししつこうたい)症候群、難治性の関節リウマチやアミロイドーシスなどがあげられています。
また、膠原病自体の症状というよりも、むしろその治療によって誘発される症状があり、ステロイド薬による精神症状、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、日和見(ひよりみ)感染症、糖尿病、大腿骨頭壊死症(だいたいこっとうえししょう)、動脈硬化症や、免疫抑制薬による感染症や悪性腫瘍の誘発などが大きな問題になってきています。
膠原病の新しい治療
近年、膠原病の原因や成り立ちが次第に明らかにされつつあり、このような知見に立脚した新しい治療方法が開発されています。TNF-α(アルファ)やインターロイキン(IL)-6などのサイトカイン(炎症を引き起こすもととなる蛋白質)やそのレセプター(受容体)に対するモノクローナル抗体、サイトカイン拮抗薬などの生物学的製剤を用いた抗サイトカイン療法は、とくに関節リウマチで広く応用され、大きな成果をあげています。さらに、抗体産生細胞であるBリンパ球を標的とした抗CD20抗体も難治性の全身性エリテマトーデスなどで効果が期待されています。
また、ガンマグロブリン大量療法、血漿(けっしょう)交換療法、末梢血幹細胞(まっしょうけっかんさいぼう)移植療法などで、膠原病へも適応が拡大されてきています。このような膠原病の難治性病態に対処する有効な治療法が確立されれば、膠原病の生命予後とQOL(生活の質)はさらに向上することが期待されます。
本章の分類・編成について
本章で取り上げた疾患は、すべて膠原病とその関連・類似疾患とされるものです。クレンペラーがあげた古典的膠原病に加えて、多様な自己免疫現象がみられ、他の膠原病にも合併することの多い疾患は膠原病のなかに分類しました。
一方、膠原病の類似疾患ですが、免疫異常があまり認められないものは原因不明の全身疾患として分類しました。免疫不全症候群は膠原病ではありませんが、膠原病では外来微生物に対する免疫応答は低下していることが多く、ステロイド薬や免疫抑制薬による治療の結果としても起こることがあるので、その関連から本章で取り上げることにしました。
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