病気事典[家庭の医学]

よぼうのきほん

予防の基本

予防の基本について解説します。

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解説(概論)

病因物質で最も多い微生物などに対する食中毒予防の基本は、

  • (1)飲食物に微生物をつけない:清潔な衛生管理をする
  • (2)飲食物中の微生物を殺す:飲食の前に熱処理をする
  • (3)飲食物中の微生物を増やさない:室温に置かないで、必ず冷蔵・冷凍保存をする

ことです。

主な病因である細菌性食中毒は、菌の性質によって少し予防法が違ってくるので、以下の注意が必要です。

(1)熱に強い毒素を産生する細菌

黄色ブドウ球菌が代表的です。この菌が産生する毒素は熱に強いので、いったん食品中で菌が増え、毒素を産生してしまったあとでは、たとえ熱を加えて食品中の菌を殺しても、食品とともに飲食された毒素は体のなかで作用して病気を起こします。

熱を加えたあとの食品はすぐに飲食したり、冷蔵・冷凍保存したりして、菌が増えないようにすることが大切です。雪印乳業のブドウ球菌毒素汚染事件が有名です。

(2)芽胞(がほう)を産生する細菌

ボツリヌス菌、ウエルシュ菌などです。高温処理後、増殖状態にある菌自身は死にますが、芽胞状態の菌(強固な外殻に包まれて休眠状態の菌)は耐熱性なので生き残り、適温(30〜37℃)になると芽胞は再び増殖できる菌にもどります。その時毒素を産生し、ヒトに病気を起こします。

食品を清潔に保って加熱後はすぐに冷温保存し、芽胞が発育しないようにすることが大切です。ボツリヌス菌による辛子レンコン事件が有名です。

(3)酸に強い細菌

O157腸管出血性大腸菌などです。一般に微生物は胃酸などの強酸で死にますが、O157などは酸に強い傾向にあります。そのため、少数の菌を摂取しても胃酸で殺されずに腸に入り、そこで菌は増殖し病気を起こします。

食べる前に熱を加えて完全に菌を殺すことが重要です。堺市で発生したO157食中毒事件が有名です。

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