病気事典[家庭の医学]
ねんえきのうしゅ
粘液嚢腫
粘液嚢腫について解説します。
執筆者:
群馬大学大学院医学系研究科皮膚科学准教授 田村敦志
どんな病気か
同じ病名で呼ばれる2つの異なる病気があります。ひとつは手足の指にできる指趾(しし)粘液嚢腫で、爪の付け根近くの皮膚に生じる半透明なしこりです。
もうひとつは口腔粘膜(こうくうねんまく)粘液嚢腫で、主に下唇の粘膜側に生じる半透明のしこりです。いずれも内部にゼリー状の粘液が入っています。
原因は何か
指趾粘液嚢腫は、関節内の潤滑剤である滑液(かつえき)が周囲組織内に漏れ出た結果、皮膚に貯留し嚢腫を形成したものと考えられます。
一方、口腔粘膜粘液嚢腫は、外傷により小唾液(だえき)腺(唾液をつくる小さな組織で、口のなかにはあちこちに多数ある)の導管(唾液を運ぶ管)がふさがり、内容物がたまって生じます。
症状の現れ方
指趾粘液嚢腫は手足の指の背面(爪と同側)で、爪の付け根とDIP関節(指の先端から数えて一番目の関節)との間に生じます。大きさは数㎜~1㎝程度で半透明のドームのように盛り上がったしこりです(図87)。DIP関節背面に生じ、皮膚の表面に変化のないしこりは、本体は粘液嚢腫と同じですが、ガングリオンと呼ばれることもあります。
口腔粘膜粘液嚢腫は下唇の裏側の粘膜に発生しやすく、透明感のあるドームのように盛り上がったしこりをつくります(図88)。表面は白くふやけていることも多いのですが、逆に周囲よりも赤く見える場合もあります。
治療の方法
診断が確定していれば、放置しておいて差し支えありません。指趾粘液嚢腫は自然に治る傾向がほとんどないため、治療の希望があれば外科的に切除します。しかし、口腔粘膜粘液嚢腫は自然に消えていくことがまれでないため、無治療で経過観察するのもよい方法です。早く治したい場合には切除します。
関連項目
情報提供元 :
(C)株式会社 法研
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