病気事典[家庭の医学]
でんぷう
癜風
癜風について解説します。
執筆者:
済生会川口総合病院皮膚科部長
加藤卓朗
原因は何か
癜風菌は皮膚の常在菌で、体幹などのいわゆる脂漏(しろう)部位に胞子の形で存在しています。高温、多湿の環境下で多汗により菌が増殖、形態変化(菌糸形になる)して癜風が発病します。そのため熱帯、亜熱帯地方では極めて多くみられます。
肥満なども誘因になり、ステロイド薬を内服していたり、内分泌疾患がある患者さんに合併することもありますが、基本的には汗かきの元気な人に生じる皮膚病です。頭部や顔面の癜風菌は、脂漏性皮膚炎との関連が注目されています。
症状の現れ方
小児から老人に発症しますが、20~40代の青壮年に好発し、男性にやや多くみられます。好発部位は背部、胸部、頸部(けいぶ)、上腕、腋窩(えきか)などで、小児では顔面に生じることがあります。春から夏にかけて発症および悪化しやすく、臨床症状は、細かい鱗屑(りんせつ)(皮膚表面からはがれかけている角質)が付着する淡褐色斑(たんかっしょくはん)(黒色癜風(こくしょくでんぷう))あるいは脱色素斑(白色癜風(はくしょくでんぷう))です。
色素異常の原因は完全にはわかっていませんが、露光部位に脱色素斑、非露光部に淡褐色斑が認められることが多く、顔面は白色癜風、腋窩は黒色癜風になることがよくあります。メスでこすると細かい鱗屑が明瞭になります。大きさは帽針頭大から、くっつき合って地図状の大きな局面になるものまでさまざまです。毛孔のところに小脱色素斑が多発することもあります。自覚症状はほとんどないか、あっても軽度のかゆみくらいです。発症初期、急性悪化時に軽度の浮腫、発赤を伴うことがあります。
検査と診断
確定診断は、白癬(はくせん)と同じように直接鏡検(顕微鏡での検査)で菌糸形の癜風菌を検出して行います。菌要素は多いので、比較的簡単に見つかります。また、ズームブルーを用いると菌が染色され有用です。ウッド灯(長波長の紫外線を出す蛍光管)で黄色の蛍光(けいこう)を発するので、診断および病変の拡大の把握に有用です。
治療の方法
癜風菌に抗菌力のある外用薬を用いますが、抗菌域の広いイミダゾール系が最も使われています。広範囲で外用が難しい例ではイトラコナゾール(イトリゾール)を内服します。
2週間で菌は陰性化することが多いのですが、治ったあとの色素沈着、色素脱失などの色素異常は長期間残り、これに対する有効な治療法はありません。また皮膚の常在菌であるため、再発率が極めて高いのが問題です。
情報提供元 :
(C)株式会社 法研
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