病気事典[家庭の医学]
せんてんせいぎょりんせんようこうひしょう
先天性魚鱗癬様紅皮症
先天性魚鱗癬様紅皮症について解説します。
執筆者:
香川大学医学部皮膚科准教授
米田耕造
原因は何か
常染色体優性(じょうせんしょくたいゆうせい)の遺伝性疾患で、ケラチン1(K1)あるいはケラチン10(K10)という蛋白を作成する遺伝子の変異により生じます。約20万人に1人の頻度で発症します。
症状の現れ方
通常は生まれた時に発症し、新生児期には全身に熱傷(ねっしょう)(やけど)のような表皮剥離(はくり)と水疱形成を示します。
加齢とともに皮膚病変の角質増殖が著しくなり、全身のびまん性潮紅、角質増殖、鱗屑(りんせつ)(皮膚表面からはがれ落ちる角質)、水疱、びらんなど、この病気に特徴的な症状を示すようになります。やがて水疱の形成はまれとなり、ほぼ全身の角質肥厚が主症状となります。
病勢はおおむね屈側に著しく、しばしば疣贅状(ゆうぜいじょう)(いぼのような)あるいは豪猪皮状(ごうちょひじょう)と呼ばれる高度の角質増殖がみられます。豪猪とはヤマアラシのことで、さざ波状、あるいは敷石状(しきいしじょう)とも形容されます。
掌蹠(しょうせき)(手のひらと足の裏)の過角化(かかくか)を伴う家系では主としてK1遺伝子の変異が、掌蹠の過角化を伴わない家系ではK10遺伝子の変異が見つかります。
検査と診断
確定診断は、病理組織学的に顆粒(かりゅう)変性(粗大なケラトヒアリン顆粒が現れること)を証明することです。新生児期には、先天性表皮水疱症、ジーメンス型水疱性魚鱗癬(ぎょりんせん)などとの区別が問題になります。
現在では、胎児皮膚生検やDNA診断による出生前診断も可能になってきています。
治療の方法
(1)新生児期では、体温調節、水分電解質バランス、二次感染に注意します。
(2)重症例ではレチノイド(チガソン)を投与しますが、小児では骨端(こつたん)の早期閉鎖を起こすので注意が必要です。
(3)5%サリチル酸ワセリンを1日2~3回患部に塗り、鱗屑の除去に努めます。
(4)ビタミンD軟膏を1日2~3回、患部に塗ります。
関連項目
情報提供元 :
(C)株式会社 法研
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