病気事典[家庭の医学]

せいぶんゆけつ

成分輸血

成分輸血について解説します。

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成分輸血の利点

白血病(はっけつびょう)や骨髄異形成(こつずいいけいせい)症候群再生不良性貧血(さいせいふりょうせいひんけつ)などの重い貧血の人や、手術やけがなどで大量に出血した時は輸血療法が必要になります。輸血は、現在の医療を支える重要な補助療法です。最近では、血液の全成分を輸血する全血(ぜんけつ)輸血に代わって、献血された血液を赤血球、血小板、血漿(けっしょう)などの成分に分け、患者さんが必要とする成分だけを輸血する成分輸血が多く行われています。

成分輸血は、全血輸血に比べて輸血される血液の量が少ないため、心臓への負担が軽くてすみます。また、輸血には輸血後移植片対宿主病〈PT‐GVHD〉(輸血した血液に含まれるリンパ球が患者さんの細胞を異物と認識して拒絶反応を起こす怖い副作用であるが、最近は放射線を照射された血液を使うためほとんど起こらない)やアレルギーなどさまざまな合併症の危険もあるので、必要な成分だけの輸血により副作用を減らすこともできます。さらに、成分輸血は、1人の献血者から提供された血液を数人の患者さんの輸血に役立てることができます。

なお現在の輸血では、スクリーニング検査の進歩によりB型肝炎C型肝炎梅毒(ばいどく)、成人T細胞白血病エイズなど輸血による感染症は著しく減っています。しかし、ウイルス量が非常に少なくてスクリーニング検査で検出できない場合や、未知の感染症の可能性など、感染の危険がまったくないわけではありません。

輸血の適応

輸血にはさまざまな副作用があるため、期待される効果と副作用の危険性のバランスを考えて必要最小限にとどめる必要があります。全血輸血は大量出血時以外はほとんど行われなくなっています。

赤血球製剤には、赤血球濃厚液(RCC)、洗浄赤血球(WRC)などの種類があり、患者さんの病状などに応じて使い分けられています。赤血球の輸血は急性出血、慢性貧血、外科手術時などに使われますが、慢性貧血ではHb7・0g/dl未満でも酸素欠乏による症状がなければ輸血しないことが多く、手術中の輸血についても全身状態が良好であるならば、出血量が循環血液量の20%までの場合は必要ないとされています。

濃厚血小板(PC)は、血小板が少なく出血しやすい患者さんに使われています。血小板の輸血は血小板数が2万/μl以上あり、明らかな出血傾向がなければひかえます。

新鮮凍結血漿(FFP)の使用は、播種性血管内凝固(はしゅせいけっかんないぎょうこ)症候群(DIC)などに複合的な凝固因子を補充する場合や血漿交換治療にほぼ限られます。血漿分画(ぶんかく)製剤のうちアルブミンは、急性の循環不全(やけどやショック)などでの使用に限られ、栄養剤的に使うことは禁じられています。

成分献血

献血には全血献血(400ml、200ml)と成分献血(血小板成分献血、血漿成分献血)があります。献血200mlからは赤血球製剤1単位と新鮮凍結血漿(しんせんとうけつけっしょう)1単位(80ml)、400ml献血からはそれぞれ2単位ができます。濃厚血小板は400ml献血から2単位(40ml)ができます。成人に血小板輸血を行う場合、1回10~20単位を使うことが多いため、5~10人分の血小板が輸血されることになります。

成分献血は、成分採血装置を使って採血しながら遠心分離器により血小板や血漿といった特定の成分だけを採取し、体内で回復に時間のかかる赤血球は再び体内にもどす方法です。

血漿成分献血では300~600ml、血小板成分献血では10~20単位を1人から採血できます。成分献血により少ない献血者からの輸血が可能になり、副作用の少ない、より安全性の高い輸血を受けることができます。

自己血輸血

献血による輸血(同種血(どうしゅけつ))は、輸血感染症や同種免疫反応による副作用がまったくないわけではありません。そのため、予定された手術の場合は、前もって自分の血液を採取、保存した自己血(じこけつ)を使う場合も増えています。また、まれな血液型や特殊な抗体をもつ人など、その人に合った血液が容易に準備できない場合にも有用です。

自己血輸血には、輸血に備えて術前に血液を保存してためておく術前貯血式、手術直前に輸液を行いつつ採血して手術経過に応じてもどす血液希釈式(きしゃくしき)、術中の出血を回収して輸血する術中回収式があります。

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