病気事典[家庭の医学]

にじせいひんけつ

二次性貧血

二次性貧血について解説します。

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どんな病気か

血液疾患以外の基礎疾患が原因で起こる貧血を、二次性貧血と呼びます。主な原因としては感染症、膠原病(こうげんびょう)、悪性疾患、腎疾患、肝疾患、内分泌疾患などがあり、とくに慢性感染症、膠原病などの慢性炎症、悪性腫瘍による貧血は病態が共通しているため、慢性疾患による貧血とも呼ばれています。

高齢者でみられる軽度から中等度の貧血は大部分が二次性貧血で、消化器系の悪性腫瘍が基礎疾患であることが多いので注意が必要です。

原因は何か

(1)慢性疾患に伴う貧血

膠原病(慢性関節リウマチ全身性エリテマトーデスなど)に伴う慢性炎症や慢性感染症(結核(けっかく)、感染性心内膜炎肝膿瘍(かんのうよう)など)において、白血球の一種である単球・マクロファージからつくられる炎症性サイトカインによる赤血球造血の抑制、鉄の利用障害、赤血球の造血を刺激する液性因子エリスロポエチン産生の抑制、網内系(もうないけい)細胞の活性化による赤血球破壊の亢進など、複数の要因により小球性(しょうきゅうせい)~正球性(せいきゅうせい)貧血がみられます。

貧血の程度は軽度から中等度で、ゆっくりと進行するため代償機構(だいしょうきこう)(代わって補うメカニズム)がはたらき、貧血症状はわずかです。

なお、全身性エリテマトーデス(SLE)では、溶血性(ようけつせい)貧血を発症することがあります。

(2)腎疾患に伴う貧血(腎性(じんせい)貧血)

赤血球の造血を刺激する液性因子エリスロポエチンは、腎臓でつくられています。慢性腎不全(まんせいじんふぜん)の患者さんの貧血の主な原因は、エリスロポエチンの産生低下による赤血球の産生低下ですが、そのほかにも、腎臓の排泄機能の低下により体内にたまる尿毒症(にょうどくしょう)性物質による造血抑制や溶血の亢進、低栄養、透析(とうせき)に伴う失血などさまざまな原因が関係しています。

(3)肝疾患に伴う貧血

肝硬変(かんこうへん)の患者さんでは、脾機能亢進(ひきのうこうしん)、赤血球膜(せっけっきゅうまく)の脂質の異常による溶血、消化管の出血、鉄や葉酸の欠乏、循環血漿(けっしょう)量の増大などが原因で、3分の2の患者さんで貧血がみられます。

(4)内分泌疾患に伴う貧血

甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)(エリスロポエチン産生の低下)、副甲状腺機能亢進症(ふくこうじょうせんきのうこうしんしょう)(造血前駆細胞の抑制、骨髄(こつずい)の線維化)、下垂体(かすいたい)機能低下症(エリスロポエチン産生の低下)、副腎皮質(ふくじんひしつ)機能低下症(赤血球産生の抑制)で貧血を伴うことがあります。

(5)悪性腫瘍に伴う貧血

原因はさまざまで、出血、二次感染、吸収障害、骨髄転移による造血抑制、腎障害、抗がん薬による骨髄抑制(骨髄にある造血細胞が障害され、減ってしまうこと)などが複雑に関係しています。

症状の現れ方

二次性貧血に特有の症状はありません。一般的な貧血症状(動悸(どうき)、息切れ、易(い)疲労感、全身の倦怠感(けんたいかん)、頭重感、顔面蒼白など)に加えて、基礎疾患(感染症、膠原病、悪性疾患、腎疾患、肝疾患、内分泌疾患)の症状がみられます。

検査と診断

スクリーニング検査として血液検査や生化学検査を行います。多くの場合は、血液検査で正球性~小球性貧血がみられます。小球性貧血の場合は鉄欠乏性貧血との区別(表8)が必要なので、さらに血清鉄(低下)、総鉄結合能(低下)、血清フェリチン(正常~増加)を調べます。

がんに伴う二次性貧血では、がん細胞が骨髄に転移すると骨髄と末梢血のバリアが破壊され、未熟な白血球や赤芽球(せきがきゅう)が末梢血に現れます(類白血病反応と呼ばれる)。この場合は、骨髄穿刺(せんし)(針を刺して採取する)や骨髄生検などの検査が必要です。

スクリーニング検査(腎機能検査、肝機能検査)の結果と臨床症状から基礎疾患を推定し、必要に応じて内分泌検査や自己抗体などの二次検査を行い、診断を確定します。

腎性貧血が疑われる場合は、エリスロポエチン濃度を測定し、貧血があるにもかかわらずエリスロポエチンの上昇がみられないことを確認します。

なお、基礎疾患がはっきりしない場合は血液疾患(とくに骨髄異形成(こつずいいけいせい)症候群)と区別するために骨髄穿刺などを行う必要があります。

治療の方法

治療の原則は基礎疾患の治療で、腎性貧血以外は貧血そのものに対する治療法はありません。鉄や葉酸、ビタミンB12の欠乏などが合併している場合は補給します。

腎性貧血は、エリスロポエチンの投与(静脈内注射または皮下注射)により、ほとんどの患者さんの貧血は改善されます。ただし、血圧上昇、高血圧性脳症脳梗塞(のうこうそく)を来すことがあるので、ヘモグロビン濃度10g/dlあるいはヘマトクリット値30%を目標にし、あまり急速に貧血を改善させないほうが安全です。エリスロポエチンの投与でも貧血が改善しない場合は、ほかの原因を調べる必要があります。

病気に気づいたらどうする

基礎疾患がわかっている場合は、それぞれの疾患の専門医の診察が必要です。基礎疾患がわからない二次性貧血の場合は、血液疾患と鑑別するために血液内科の受診が必要です。なお、高齢者の場合は、消化器系の悪性腫瘍が基礎疾患であることが多いので注意が必要です。

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