病気事典[家庭の医学]

さいきんのちりょうほうのしんぽ

最近の治療法の進歩

最近の治療法の進歩について解説します。

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解説(概論)

造血器腫瘍に対しては、分子標的(ぶんしひょうてき)治療薬(病気に関係する部分(分子レベル)を標的にする薬)の発展が期待されています。

代表的なものが慢性骨髄性白血病に対するグリベックで、白血病細胞に特異的に作用することから、大変よい治療成績が得られるようになりました。これによって従来の治療方針が一変し、造血幹細胞移植(ぞうけつかんさいぼういしょく)は第一選択ではなくなり、またインターフェロン-α(アルファ)もあまり使われなくなりました。なお最近では、グリベックが効かなくなった場合の第2世代の新薬も使えるようになっています。

抗体医薬では、悪性リンパ腫に対してリツキサン(Bリンパ球を破壊する)が用いられるようになり、化学療法との併用で治療成績が向上してきています。

急性白血病に対する造血幹細胞移植療法では、骨髄移植だけでなく臍帯血(さいたいけつ)移植が成人にも活発に試みられるようになってきました。末梢血(まっしょうけつ)幹細胞移植も行われることがあります。ミニ移植は、高齢者や臓器障害のある患者さんにも実施できることから、その実施例が増えてきています。

多発性骨髄腫(たはつせいこつずいしゅ)に対する治療では、最近大きな進歩がみられています。サリドマイドがしばしば効果的であり、ベルケードという新薬は難治例でもかなり有効です。さらに、レナリドマイドという新薬も認可される見通しです。また、造血幹細胞移植も行われるようになり、高齢者でなければ自己(自家)末梢血幹細胞移植を積極的に実施する施設が増えてきています。

特発性血小板減少性紫斑病(とくはつせいけっしょうばんげんしょうせいしはんびょう)では、ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌療法が有効な場合があると報告されており、保菌者は試してみる価値があります(保険診療未承認)。とくに、ステロイド療法を行いにくい高齢者にとっては、負担の少ないよい治療法になる可能性があります。

本編の分類・編成について

以下の各論は、「貧血と多血症」「白血病/悪性リンパ腫、その他」「出血傾向」からなり、それぞれのなかで代表的疾患を扱っています。

「治療法」としては、成分輸血と造血幹細胞移植を取り上げています。前者は、安全性が社会問題にもなっており、どのような時に必要かを理解しておくことが大切です。後者は移植条件とおよその移植成績を知っておくことが治療方針を決定するうえで重要です。

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