病気事典[家庭の医学]
にんしんとうにょうびょう
妊娠糖尿病
妊娠糖尿病について解説します。
執筆者:
東京女子医科大学病院糖尿病センター講師
佐中眞由実
原因は何か
妊娠時には胎盤(たいばん)で血糖値を上げやすいホルモン(インスリン拮抗ホルモン)などが産生されるため、妊娠中期以後にインスリンが効きにくい状態になり(インスリン抵抗性)、血糖値が上昇しやすくなります。
正常の妊婦さんでは、インスリン抵抗性になる時期には、膵臓からインスリンを多く分泌して血糖値を上げないように調節します。しかし必要なインスリンを分泌することができない体質の妊婦さんでは、血糖値が上昇します。
体重が重い、両親や兄弟姉妹に糖尿病がある、尿糖陽性、先天奇形や巨大児の出産歴がある、流産や早産歴がある、35歳以上、などの場合には血糖値が上昇しやすいといわれています。
また、妊娠中に検査をして、血糖値が高いことが初めてわかることもあります。とくにインスリン抵抗性のない妊娠初期に判明した場合には、妊娠前から血糖値が高かった可能性が高いと考えられます。
症状の現れ方
妊娠中に血糖値が高い場合には、母体のみでなく、胎児にもさまざまな影響が出てきます。母体では早産、妊娠高血圧症候群(にんしんこうけつあつしょうこうぐん)、羊水過多症(ようすいかたしょう)、尿路感染症が、胎児には巨大児、新生児の低血糖が起きやすく、子宮内で胎児が死亡することもあります。
さらに、妊娠前から血糖値が高かった可能性の高い場合には、流産しやすく、また生まれてきた子どもが先天奇形を合併していることもあります。
検査と診断
妊娠糖尿病のスクリーニング(ふるい分け)は、妊娠初期から開始します。食前、食後を問わず測定した随時(ずいじ)血糖値が100㎎/dl以上、または妊娠中に血糖値が上昇しやすい体質がある場合には、75gブドウ糖負荷試験を行い、結果が異常であった時には治療を開始します。
異常がない場合には、妊娠中期に随時血糖値を再度測定して100㎎/dl以上の場合、または50gGCT(glucose challenge test)を行い、1時間値が140㎎/dl以上の場合には、ブドウ糖負荷試験を行います。
妊娠糖尿病は75gブドウ糖負荷試験の結果、負荷前100㎎/dl以上、負荷後1時間180㎎/dl以上、負荷後2時間150㎎/dl以上のうちいずれか2点を満たした時に診断します。
治療の方法
治療は食事療法から開始しますが、血糖値が非常に高い時にはインスリン療法が必要です。出産後には血糖値は改善することが多いのですが、妊娠前から血糖値が高かったと考えられる妊婦さんでは、分娩後も治療を続けます。
妊娠中に血糖値が高くなった女性は、将来糖尿病になりやすいので、出産後も時々血糖値を測定し、高血糖の早期発見、早期治療を心がけます。
また、糖尿病になりやすい体質の女性は、妊娠前に血糖値を測定し、高かった場合には治療を行い、改善してから妊娠することが大切です。
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情報提供元 :
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