病気事典[家庭の医学]

そのたのとうにょうびょうがんがっぺいしょう

その他の糖尿病眼合併症

その他の糖尿病眼合併症について解説します。

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角膜障害(かくまくしょうがい)

角膜(くろめ)は強膜(きょうまく)(しろめ)とともに眼球の外壁を構成し、最初に眼球内に入る光の入り口として重要な組織です。糖尿病では角膜上皮びらんや、時には角膜潰瘍(かくまくかいよう)が発生することがあります。角膜内皮(かくまくないひ)障害もまれに認められます。角膜上皮(かくまくじょうひ)障害は、網膜レーザー光凝固(ひかりぎょうこ)治療後や網膜症に対する硝子体(しょうしたい)手術後に発生しやすい傾向があります。糖尿病における角膜上皮障害は、網膜症の重症度が強く関連し、角膜知覚が低下します。

角膜生体染色をしたうえで細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査を行い診断されます。症状としては結膜充血、異物感、眼痛、視力低下などです。いったん発症すると長期化する傾向があり、最悪の場合は角膜混濁を残して高度の視力低下の原因になります。

治療法としては内科的な血糖コントロールはもちろんのこと、眼科的に抗生剤や人工涙液の点眼などによる角膜上皮の保護、再生治療が重要です。

ぶどう膜炎(まくえん)

ぶどう膜は虹彩、毛様体(もうようたい)、脈絡膜(みゃくらくまく)で構成され、眼球組織のなかでは最も血管と色素に富む組織です。ぶどう膜炎は糖尿病眼合併症としては比較的まれですが、しばしば瞳孔領(どうこうりょう)にフィブリン膜を形成し、急激に発症する虹彩炎(こうさいえん)(前部ぶどう膜炎)と同様の症状が現れます。多くは血糖コントロールが不良の状態で発症します。

細隙灯顕微鏡検査で診断されます。症状としては充血、霧視(むし)(霧がかかったように見える)、眼痛、流涙、視力の低下などが認められます。放置すると虹彩後癒着(こうゆちゃく)、緑内障(りょくないしょう)などを引き起こすことがあります。治療法としてはもちろん血糖コントロールが基本ですが、眼科的には消炎、癒着解離(かいり)を目的としたステロイド薬や散瞳薬(さんどうやく)の点眼が主体になります。

血管新生緑内障(けっかんしんせいりょくないしょう)

どんな病気か

眼球内の毛様体で産生される房水(ぼうすい)は、後房、硝子体腔から瞳孔をへて前房に達し、虹彩の根元にある隅角線維柱帯(ぐうかくせんいちゅうたい)から眼の外へ排出され、これにより房水循環が維持され、眼圧が正常に保たれています。線維柱帯はこの房水循環のなかで排水路のフィルターの役割を果たしています。

糖尿病網膜症が進行している眼では、虹彩や線維柱帯に新生血管が生じてくることがあります(図7)。この新生血管はフィルターである線維柱帯を目詰まりさせてしまい、房水排水路が損なわれて眼のなかに房水がたまった状態になり、眼圧が上昇します。眼圧が上昇するとその圧力で視神経を圧迫し、圧迫を受けた部分に相当する視野に障害を来すことになります。この状態が血管新生緑内障です。

診断と治療

細隙灯顕微鏡による隅角(ぐうかく)検査(房水排水路の隅角の状態をみる)、眼圧検査などで診断され、症状は充血、眼痛、視力の低下などです。血管新生の直接の原因は網膜血管の閉塞が進行した糖尿病網膜症です。したがって基本的な治療法は徹底的な網膜レーザー光凝固(ひかりぎょうこ)です。

通常のレーザー治療で十分な凝固ができなければ、水晶体切除および硝子体切除のうえ、眼底最周辺部までの眼内レーザー凝固を行う必要があります。それでも眼圧が下がらない場合は緑内障手術が必要で、最終的には毛様体を破壊する目的で毛様体の冷凍凝固を行います。

しかしこれらの治療にも反応せずに、失明に至るケースがしばしばあります。直接の原因である糖尿病網膜症の早期治療、血糖コントロールによる予防が、失明を未然に防ぐ意味でとくに重要です。

眼筋麻痺(がいがんきんまひ)(複視(ふくし))

眼球運動を担う外眼筋は、左右の動眼神経、外転(がいてん)神経、滑車(かっしゃ)神経の支配のもとに左右のバランスをとって動きます。これらの脳神経に障害が及ぶと左右の眼球運動のバランスがくずれて物が二重に見える(複視)ようになります。糖尿病で突発する複視は、動眼神経麻痺や外転神経麻痺によることがしばしばあります。

CT検査などで頭蓋内疾患が否定されれば、糖尿病による外眼筋麻痺の可能性が高く、血糖コントロールによる改善が期待できます。

視神経障害(ししんけいしょうがい)

糖尿病で発生する視神経障害には、虚血性(きょけつせい)視神経症と視神経乳頭症(にゅうとうしょう)とがあります。

視神経乳頭症では一過性の視神経乳頭浮腫(むくみ)を来しますが、一般的には自然に症状が回復し予後は良好です。しかし虚血性視神経症は血糖コントロールやステロイド治療に抵抗し、不可逆性(元にもどらない)のことがほとんどで、視力の予後は不良です。

屈折調節障害(くっせつちょうせつしょうがい)

糖尿病治療開始時や血糖の変動が強い時に、水晶体の膨化(ぼうか)(ふくらむ)や調節機能障害により近視化や遠視化が認められることがあります。

このような場合は血糖値の安定化とともに元の屈折状態にもどることがあるので、眼鏡の変更などはしばらく見合わせます。

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