病気事典[家庭の医学]
にょうかんしゅよう
尿管腫瘍
尿管腫瘍について解説します。
執筆者:
順天堂大学医学部附属練馬病院泌尿器科先任准教授・科長
坂本善郎
どんな病気か
50~70代の男性に多くみられます。
尿管は、膀胱・腎盂(じんう)とともに移行上皮でおおわれています。このため、尿管には移行上皮がん(尿路上皮がん)が発生します。まれに、扁平上皮がんや腺がんもみられます。尿管腫瘍は通常、ほとんどががんであるため、尿管がんとして扱われます。また、腎盂腫瘍(がん)と尿管腫瘍(がん)はひとつの疾患群として、腎盂尿管腫瘍(がん)として取り扱われます。
移行上皮がんのなかでは膀胱がんが圧倒的に多く、腎盂尿管がんは移行上皮がんのなかの5%前後程度です。腎盂尿管がんがある場合には約30%に膀胱がんが合併するといわれ、逆に膀胱がんがある場合には約5%に腎盂尿管がんの合併があるといわれています。
そのため、腎盂尿管がんがある場合には膀胱鏡検査は必須であり、逆に膀胱がんがある場合には上部尿路検索のためにCTまたは静脈性腎盂造影が必須です。
症状の現れ方
肉眼的血尿(目で見てわかる血尿)が多く、尿路閉塞を起こすと水腎・水尿管症が生じ、軽度の腰背部・側腹部鈍痛が現れます。
膀胱がん経過観察中にCTまたは静脈性腎盂造影を行って発見されることもあります。また、尿管結石のような激しい痛みを伴うことは少ないので、ほかの病気の精密検査中や検診・人間ドックなどで偶然発見されることもあります。
検査と診断
尿検査、尿細胞診を行います。静脈性腎盂造影では、尿管の陰影欠損、水腎(すいじん)・水尿管症(すいにょうかんしょう)を示します。CTやMRI検査も診断に有用です。
逆行性腎盂造影(膀胱鏡下に尿管内にカテーテルを挿入して行う検査)を行い、腎盂・尿管での尿を採取したり、生理食塩水による洗浄液の細胞診検査を行うことが診断の決め手になります。尿採取後、造影剤を注入して腎盂・尿管の形態を描出させます。症例により尿管鏡で観察し、組織を採取することもあります。
尿管腫瘍(がん)と診断した場合には、肺・肝・骨・リンパ節の転移巣を検索するために、CTまたはMRI、骨シンチグラフィを行います。
治療の方法
転移がない場合は、腎および尿管すべて(尿管口までを含めて)を摘出する腎尿管全摘除術を行います。悪性度が低く表在性の尿管がんに対しては、尿管鏡による切除も試みられています。転移はリンパ節・肺・肝・骨などに認めます。
初診時に、すでに転移のある進行がんの場合や、術後転移が生じた場合には、膀胱がん治療の場合と同様にGC療法(ゲムシタビン、シスプラチン)やM‐VAC療法(メソトレキセート、ビンブラスチン、アドリアマイシン、シスプラチン)に代表される多剤併用化学療法を行います。これは1コース3~4週間の治療で、3~4コース行います。骨髄(こつずい)抑制(白血球・赤血球・血小板の低下)、吐き気・嘔吐、脱毛、末梢神経障害などの副作用があります。
奏効率(完全または部分的に効果のあるもの)は50~60%ですが、完全に寛解(かんかい)してもまた再発する可能性のあることがこの治療法の問題点です。
情報提供元 :
(C)株式会社 法研
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