病気事典[家庭の医学]

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HBVキャリアの肝炎進展段階

HBVキャリアの肝炎進展段階について解説します。

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HBVキャリアの肝炎進展段階の解説(コラム)

 HBVキャリアの臨床経過は、大きく4つの段階に分けられます。まず初期感染に続いてキャリアとなったあとに、感染肝細胞に対する免疫反応がほとんどない“(1)免疫寛容期”が10〜30年間持続します。この時期はHBe抗原陽性でHBVの増殖力も強いのですが、肝炎は起きていません。その後、ほとんどの症例で次の“(2)免疫活動期”に入ります。血清ALT値の上昇と、肝組織での炎症の活発化に伴い、HBV DNA量が減少します。多くの場合、この状態が数カ月から数年間続いたあとにe抗原からe抗体へのセロコンバージョンが起こり、それに続いてウイルスの低複製期に入ります。この“(3)HBe抗体陽性無症候性キャリア期”には、血中のウイルス量が10の4乗〜10の5乗コピー/mL以下に低下するとともに血清ALT値も正常化し、肝組織における肝細胞壊死(えし)やリンパ球浸潤(しんじゅん)などの炎症反応も改善します。多くの症例では生涯にわたりこの状態が続きます。

 その後、一部の症例ではHBVの増殖能がさらに低下し、HBs抗原も陰性化します((4)治癒期)。しかしながら、HBe抗原セロコンバージョン後もウイルス増殖が活発で慢性肝炎が持続する症例が存在し(e抗原陰性慢性肝炎)、これらの症例では持続的なe抗原陽性慢性肝炎例と同様に肝硬変(かんこうへん)や肝がんへと進展します。

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