病気事典[家庭の医学]

びーがたういるすかんえんのちりょう

B型ウイルス肝炎の治療

B型ウイルス肝炎の治療について解説します。

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B型ウイルス肝炎の治療の解説(コラム)

(1)インターフェロン(IFN)治療

日本では従来、IFN治療はHBe抗原陽性のB型慢性肝炎に対して保険適応となっていましたが、2011年からPEG化したIFN(Peg‐IFNα2a)製剤がe抗原の有無にかかわらずB型慢性活動性肝炎に対して保険適応となっています。副作用は発熱、食欲低下、汎血球減少(はんけっきゅうげんしょう)、甲状腺機能障害(こうじょうせんきのうしょうがい)、抑(よく)うつ障害、間質性肺炎(かんしつせいはいえん)などがあり、治療中は慎重な経過観察を必要とします。

抗ウイルス効果は核酸アナログ製剤に比べると弱いのですが、免疫賦活作用(めんえきふかつさよう)があるので投与終了後のセロコンバージョン(コラム)が期待できます。24~48週間のPeg‐IFN治療は従来のIFNよりも治療効果が高いことがわかっていますが、それでもHBe抗原陽性の場合で治療効果が期待できるのは20~30%、HBe抗原陰性の場合で20~40%にとどまります。

(2)核酸アナログ治療

2000年以降、HBVの増殖を強力に抑制する核酸アナログ製剤(ラミブジン(LAM)、アデホビルピボキシル(ADV)、エンテカビル水和物(ETV)、テノホビル・ジソプロキシルフマル酸塩(TDF)、テノホビル・アラフェナミド(TAF))の開発が進み、一般臨床において広く用いられるようになっています。これらはすべて内服薬であり、IFNにみられるような副作用はほとんどみられません。ウイルス増殖を強力に抑制し、肝炎を沈静化させます。しかし、肝臓からHBVを完全に排除する効果はなく、投与中止後には高率に肝炎が再発します。また長期投与した場合には、薬剤耐性ウイルスの出現がみられることがあります。

LAMは最も早くB型慢性肝炎に適応となった核酸アナログ製剤ですが、投与1年で20%、2年で40%、3年で60%と、耐性ウイルス出現率が高いのが問題でした。LAMに対する耐性ウイルスが出現している症例に対しては、LAMとADVの併用治療、またはETV、TDF、TAFの投与を行うことで長期にわたる治療効果が期待できることが示されています。

今後新たに核酸アナログによる治療を受ける場合は、長期投与でも薬剤耐性ウイルスが出現しにくいETV、TDF、TAFが、抗ウイルス治療の中心となっています。

核酸アナログによる治療は、30~40歳以上の慢性活動性肝炎症例が、最も良い適応となります。長期投与の必要性や胎児への影響などから、若年症例に対する適応は慎重にしなければなりません。しかし肝生検の結果などにより、高度に進行した慢性肝炎や肝硬変(かんこうへん)と診断された症例では、核酸アナログ治療の適応となります。その一方でHBe抗原陽性の無症候性キャリアとHBe 抗原陰性の非活動性キャリアには治療適応がありません。なお、HBe 抗原陰性の非活動性キャリアとは、1年以上の観察期間のうち3回以上の血液検査でHBe抗原陰性、ALT値30IU/L以下、HBV DNA量2,000IU/mL(3.3Log IU/mL)未満のすべてを満たす症例とされています。

(3)肝庇護療法(かんひごりょうほう)

肝庇護療法(ウルソデオキシコール酸、強力ネオミノファーゲンC、グリチルリチン製剤、小柴胡湯(しょうさいことう)など)は肝炎の沈静化を目的とした治療です。免疫細胞による傷害から肝細胞を保護することで肝炎の進行を遅らせることを目的とします。

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