病気事典[家庭の医学]

こうもんつう

肛門痛

肛門痛について解説します。

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どんな病気か

肛門周辺に発生する痛みのことです。これには原因の明らかな症候性(しょうこうせい)肛門痛と、原因のわからない無症候性肛門痛とがあります。実は原因のはっきりしない、心因的なものがいちばん対応が厄介なのです。

肛門痛にはチクチク、ズキズキ、ジーンとした性質のものがあります。一方、骨盤・直腸痛はズーンとした鈍痛、ボールがはまり込んだ感じ、神経痛のような発作性の痛み、いつも便意を感じる不快感などがあります。そして、排便によって変化する、長く座っていると出現、夕方または夜間に出てくるなど、日内変動もあります。

原因は何か

症候性肛門痛の原因には、表3のように一般的な肛門の病気から、直腸、泌尿生殖器、仙骨(せんこつ)・筋肉・靭帯(じんたい)などの骨盤内臓器の病気や腰椎(ようつい)・脊髄(せきずい)の病気、そして外傷などがあります。

無症候性肛門痛の代表的なものとして、消散性直腸肛門痛、肛門挙筋(こうもんきょきん)症候群、仙骨・陰部神経痛があります。

症状の現れ方

消散性直腸肛門痛とは、夜間から早朝にかけて、突然、直腸肛門部に激痛が走り、30分から1時間の七転八倒の苦しみのあと、朝になると何ごともなかったように治ってしまう痛みです。この時、無性に便を出したい感じがするのが特徴です。しかし、精密検査をしても、何の所見もありません。

肛門挙筋症候群は、立ったり座ったりする時に、尾骨(びこつ)から骨盤底にかけて強い痛みが出るもので、肛門挙筋のけいれんや筋肉の肥厚が原因と思われます。

仙骨・陰部神経痛の原因は不明です。しかし、陰部神経に沿った圧痛がある、以前に高所から落ちたとか、尻餅をついた、最近背骨が曲がってきたなど、脊柱の変化との因果関係を推測させることがあります。

そのほか、心因的なもの、全身の病気の部分現象として、神経梅毒(ばいどく)、スモン病、脊髄腔造影、過敏性直腸、帯状疱疹後疼痛(たいじょうほうしんごとうつう)や加齢による循環障害など多数の要因があります。

治療の方法

症候性肛門痛では、原因となる病気を治療することが先決です。無症候性肛門痛では、食生活の改善、運動不足の解消、ストレス解消、うつ病認知症対策など、生活環境を変えることがまずすすめられます。

次いで鎮痛薬などの内服、座薬をはじめ、鎮痛薬や副腎皮質ホルモン剤を加えた注射で、仙骨・陰部神経ブロックを行うことが有効になります。さらに、精神安定薬や抗うつ薬の内服などが効果的なことがあります。

外科的には、肛門挙筋の一部を切離して、筋肉のけいれんをとることも行われています。

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