病気事典[家庭の医学]

だいちょうけいしつしょう

大腸憩室症

大腸憩室症について解説します。

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どんな病気か

大腸憩室とは、大腸粘膜の一部が腸管内圧の上昇により嚢状(のうじょう)に腸壁外に突出したもので、大腸憩室が多発した状態を大腸憩室症といいます。憩室壁が腸壁の全層からなる真性(先天性)憩室と、筋層を欠く仮性(後天性)憩室に分けられますが、大腸憩室の大部分は仮性憩室で、比較的高齢者に多い病気です。

従来、欧米では左側の大腸(S状結腸)に好発するのに対し、日本では右側結腸に多いといわれてきました。しかし、近年の食習慣や生活様式の欧米化に伴い、日本でも左側大腸の症例が増えています。

原因は何か

第一の原因として、大腸内圧の上昇があげられます。すなわち、最近の食生活の欧米化とともに、肉食が多く、食物繊維の摂取量が減少したため、便秘や腸管のれん縮、ひいては腸管内圧の上昇を起こしやすくなったと考えられます。

第二の原因として、加齢による腸管壁の脆弱化(ぜいじゃくか)があげられます。そのほか、体質、人種、遺伝、生活環境などの要因も複雑に作用し合って発生すると考えられています。

症状の現れ方

多くは無症状のまま経過しますが、時に便通異常(下痢、軟便、便秘など)、腹部膨満感(ぼうまんかん)、腹痛などの腸運動異常に基づく症状、つまり過敏性腸症候群(かびんせいちょうしょうこうぐん)に似た症状を起こします。

合併症としては、憩室出血や憩室炎が10~20%の頻度で発生し、強い腹痛、下痢、発熱、血便などを伴います。憩室炎は、憩室内に便がたまって起こるとされていますが、進行すると穿孔(せんこう)(孔(あな)があく)、穿孔性腹膜炎、狭窄(きょうさく)による腸閉塞、周囲臓器との瘻孔(ろうこう)形成(小さな孔が通じる)を生じることがあります。

検査と診断

大腸憩室症の診断には、注腸造影X線検査が最も有用です(図23)。

大腸内視鏡検査でも、粘膜面に円形または楕円形のくぼみとして認められますが、憩室そのものの診断能力は注腸造影よりも劣ります。しかし、合併症として出血を伴う場合は大腸内視鏡検査が第一選択です。

大量出血では血管造影が必要となります。また、憩室炎の合併時には、腹部超音波、CT、MRIなどの検査が有用です。

治療の方法

無症状であれば、とくに治療の必要はありません。腸運動異常に基づく症状がある時は、薬物の投与を行います。憩室炎を合併した場合は、入院のうえ、絶食、輸液、抗生剤の投与が必要です。

憩室出血の多くはこのような治療で止血しますが、大量出血が持続する場合は、血管造影や内視鏡検査施行時に止血術が行われます。

保存的治療で軽快しない場合、再発を繰り返す場合、腹膜炎腸閉塞の場合は外科的治療が必要です。

病気に気づいたらどうする

無症状であれば放置しておいてよいのですが、合併症を予防する目的で、できるだけ繊維成分の多い食事を摂取し、便通を整えるように心がけることが大切です。

合併症を疑う症状が現れた場合は、できるだけ早く消化器内科を受診してください。

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