病気事典[家庭の医学]

ふくへきへるにあ

腹壁ヘルニア

腹壁ヘルニアについて解説します。

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どんな病気か

腹の壁の弱い部分から、腹のなかの内臓が腹膜に包まれたまま脱出する状態です。内臓が脱出する部分をヘルニア門、脱出する内臓をヘルニア内容、ヘルニア内容を包む膜をヘルニア嚢(のう)と呼びます。体表面がふくらんで見えることもありますが、はっきりしない場合もあります。

最も一般的なものは、腹部の手術の創(そう)(傷)の部分にみられるもので、「腹壁瘢痕(ふくへきはんこん)ヘルニア」と呼ばれています。ヘルニアの突出は、多くの場合、おなかの力を抜いたりすることで自然に元にもどりますが、突出したまま元にもどらなくなることもあり、その状態を嵌頓(かんとん)と呼びます。

腸が嵌頓した場合には腸閉塞(ちょうへいそく)となり、突出する腹壁の弱い部分が小さいと腸が締めつけられ、血液の流れが妨げられ「絞扼性(こうやくせい)腸閉塞」となり、診断や治療の遅れは命に関わります。

原因は何か

腹壁ヘルニアの原因は、それぞれの病気によって異なります。腹壁瘢痕ヘルニアは、手術によって腹壁を支える筋膜と呼ばれる強靭な膜に欠損部ができ、ここから腹膜に包まれた内臓が突出します。

ほかの腹壁ヘルニアでは、先天的、または外傷などによって後天的にできた腹壁のくぼみに内臓、主に腸が入り込んだり滑り込む形で突出します。強い腹圧がかかると簡単に突出します。

症状の現れ方

腹痛を訴えることもありますが、鈍痛や違和感程度の不定愁訴のことや無症状のこともあります。また、突然の激しい腹痛や吐き気・嘔吐などの腸閉塞症状で明らかになることもあります。

嵌頓状態が続くと、手術が必要な絞扼性腸閉塞になり、診断や治療が遅れるとショック状態(脈や呼吸が速く弱くなるなど)になります。

検査と診断

腹壁瘢痕ヘルニアは、おなかの手術創部の突出を見れば容易に診断できますが、ほかの腹壁ヘルニアでは、CT検査などを行っても診断が困難なことが少なくありません。

治療の方法

ヘルニアが嵌頓状態の場合は、緊急に嵌頓を解除しなければ絞扼性腸閉塞になるため、緊急手術で嵌頓を解除します。手術以外の方法で嵌頓が解除された場合も、ヘルニアの原因は修復されていないため、手術で原因となった構造を修復する必要があります。

しかし、腹壁瘢痕ヘルニア以外の腹壁ヘルニアでは診断がつかずに開腹手術となり、手術で初めて原因がわかることがほとんどです。

病気に気づいたらどうする

激しい腹痛、吐き気・嘔吐などの腸閉塞症状を認めたら、すぐに病院の外科を受診してください。

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