病気事典[家庭の医学]

いのびょうき、ちょうのびょうき

胃の病気、腸の病気

胃の病気、腸の病気について解説します。

執筆者:

胃の病気

長い間、胃の病気の原因には確定したものはなく、多くの要因が関与していると推定されていました。しかし、1982年に発見されたヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)が胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃がんの病因の大きな部分を占めていると考えられるようになってきました。そのため、胃の病気の概念と治療を根底から見直す作業が世界的に行われています。

胃の病気の診断には、バリウムによるX線検査や内視鏡検査が自覚症状以上に重要であることをしっかり記憶してください。とくに、内視鏡機器の最近の進歩は著しく、観察盲点がほとんどないくらい精度が上がってきています。さらに超音波内視鏡の発展により、がんを診断することだけではなく、その進行度の診断も可能となってきています。

胃・十二指腸潰瘍の治療ではH2ブロッカーに引き続くプロトンポンプ阻害薬(PPI)の開発により、胃酸分泌をほぼ完全に抑制できるようになり、潰瘍を治す治療としては十分満足のいく結果が得られています。再発予防に関しては、ピロリ菌の除菌により維持療法なしに再発をほとんど予防できることが明らかになりました。日本でも2000年11月より、医療保険が適用されています。

胃がんの治療は外科的に切除する方法が主流を占めていましたが、内視鏡機器や技術の進歩により、内視鏡的粘膜切除術や腹腔鏡(ふくくうきょう)を用いた手術など、侵襲(しんしゅう)の少ない治療が早期胃がんを中心に行われてきています。

腸の病気

近年日本では、胃がんの発生率が減少し、それに代わって大腸がんの発生率の増加がみられるようになりました。それに対応して、1992年4月に大腸がん集団検診が老人保健法(老健法)に導入され、大腸がんの早期発見を目指し、行政検診としてスタートしました。これは、免疫学的便潜血反応(べんせんけつはんのう)によるスクリーニングによって陽性者を選別し、内視鏡またはバリウム造影による精密検査を行う方法です。

胃の場合と異なり、全大腸を検索できる内視鏡医の数が足りないという問題点を抱えている(大腸の内視鏡検査は胃の内視鏡検査より技術的にはるかに難しく、専門医を養成するのに膨大な時間がかかる)ことから、日本消化器内視鏡学会では、大腸内視鏡検査に関する教育セミナーを全国規模で毎年開催し、専門医の養成に努めています。検診で発見された早期大腸がんのほとんどは、外科手術によらない内視鏡的粘膜切除術で根治が可能となってきています。

近年、日本で発生率が急速に増加しているクローン病と潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)は、炎症性腸疾患に属し、消化管の病気のなかでも札つきの難病といわれています。クローン病の病変は、口腔内から肛門までの消化管のあらゆる部位に発生します。これに対して潰瘍性大腸炎は、大腸に限局して潰瘍を多数形成します。

どちらも、病因が明らかでなく、かつ治療に難渋する病気でしたが、近年、炎症に関与するサイトカインを抑制する抗体療法に日本でも医療保険が適用され、大きな成果をあげています。

      情報提供元 : (C)株式会社 法研 執筆者一覧
      掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。