病気事典[家庭の医学]
へんとうしゅういのうよう(へんとうしゅういえん)
扁桃周囲膿瘍(扁桃周囲炎)
扁桃周囲膿瘍(扁桃周囲炎)について解説します。
執筆者:
滋賀医科大学睡眠学特任教授
宮崎総一郎
秋田大学医学部耳鼻咽喉科学准教授
本田耕平
どんな病気か
急性扁桃炎に続発し、口蓋扁桃(こうがいへんとう)(図12、図13)の周囲に炎症が及ぶことで起こります。30代の男性に多く発症します。扁桃に生じた炎症が扁桃被膜外に波及して扁桃周囲炎を生じ、さらに膿瘍を形成すると考えられています。
症状の現れ方
急性扁桃炎に引き続いて発症し、激烈な咽頭痛が特徴です。通常は片側だけです。感染範囲が広がると耳への放散痛、開口障害が出現します。嚥下痛(えんげつう)も高度で、唾液(だえき)を飲むことができなくなり、よだれをたらします。
全身的には、高熱を伴い、経口摂取がほとんどできなくなり、全身倦怠感(けんたいかん)、脱水状態となります。
検査と診断
口内を調べると、口蓋扁桃のみならず、その周囲の粘膜が強く赤く腫脹(しゅちょう)し、扁桃が口のなかに張り出しています(図14)。膿瘍部を針で刺して膿汁が吸引されれば診断できます。
しかし、必ずしも膿瘍部が穿刺(せんし)できるとは限りません。そのため、最近ではCTや超音波検査で膿瘍の場所を診断することがあります。
その他の検査は急性扁桃炎と同様です。
治療の方法
扁桃周囲炎と、それが進展した扁桃周囲膿瘍の区別が大切です。扁桃周囲炎の場合は、抗生剤を主体とした保存療法が選択されます。
しかし、扁桃周囲膿瘍では、保存的治療よりも膿汁の排泄を目的にした治療が重要です。膿汁の排泄には、膿瘍の場所や程度を考慮して、注射針で穿刺吸引する場合と、局所麻酔後にメスで1~2㎝程度を切開する場合があります。切開後には、十分に排膿するためにガーゼドレーンを置くことがあります。
外科処置に加えて、点滴注射により抗生剤を投与し、脱水の改善を図ります。
緊急手術に対応できる施設では、積極的に扁桃摘出術(コラム)を行い、治療期間の短縮、再発予防を図ることがあります。
情報提供元 :
(C)株式会社 法研
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