病気事典[家庭の医学]
まんせいびえん
慢性鼻炎
慢性鼻炎について解説します。
執筆者:
自治医科大学附属さいたま医療センター耳鼻咽喉科教授 飯野ゆき子
日本赤十字社医療センター耳鼻咽喉科 太田 康
どんな病気か
鼻の粘膜が慢性的に赤く、はれている状態です。副鼻腔炎(ふくびくうえん)を伴うものは含みません。血管収縮薬に反応して鼻づまりがとれれば、慢性単純性鼻炎です。血管収縮薬を噴霧しても鼻の粘膜のはれがとれない場合は、慢性肥厚性鼻炎(まんせいひこうせいびえん)と呼びます。
原因は何か
ウイルスや細菌感染による急性鼻炎を繰り返した場合、あるいは長引いた場合に起こります。また鼻中隔弯曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)があれば、弯曲によって広くなった鼻腔側の粘膜がはれて慢性肥厚性鼻炎が起こります。
化学物質や物理的な刺激、さらに降圧薬や末梢血管収縮薬の副作用でも起こります。また、市販されている鼻づまりを短時間で解消させる血管収縮薬の点鼻を頻用すると、逆に鼻腔内の粘膜の肥厚が生じ、いわゆる点鼻薬性鼻炎という慢性鼻炎の一種になり、頑固な鼻づまりを生じさせることになります。
症状の現れ方
鼻づまりと鼻漏(びろう)が主な症状です。鼻づまりは、単純性鼻炎の場合は片側のみあるいは左右交代に起こりますが、肥厚性鼻炎の場合は常に両側の鼻づまりが起こります。
鼻漏は粘性が多く、鼻がかみきれない場合もあります。また、鼻漏がのどに落ちる、すなわち後鼻漏(こうびろう)もよく起こります。
検査と診断
診断は鼻鏡所見によります。しかし、鼻炎は他の疾患を合併していることが多いため、さらに区別するためのいろいろな検査が重要です。
まず、副鼻腔単純X線検査、あるいはCT検査により副鼻腔病変があるかどうかをみます。また、アレルギー検査(皮内テストや血液検査によるアレルギーテスト、鼻汁好酸球検査など)によりアレルギー性鼻炎か否かを調べます。これらの病変がない場合は慢性鼻炎と考えます。
まぎらわしい病気に血管運動性鼻炎(けっかんうんどうせいびえん)があります。これは慢性鼻炎と同様に、副鼻腔病変もなく、またアレルギー検査もすべて陰性ですが、化学製品、疲労、気温の変化、湿度などによりくしゃみや鼻づまり、鼻漏が生じる病気で、鼻の粘膜の血管運動神経の異常な反応により生じると考えられています。
治療の方法
ステロイドスプレーの鼻への定期的な噴霧が有効です。最近はステロイドといっても鼻スプレーのなかには全身への影響が少ないものも多数あり、ある程度長期的に使用できます。しかし定期的に使用しないと効果が十分現れないことがあります。また、アレルギー性鼻炎を合併している場合は、抗アレルギー薬などの内服薬も併用します。
症状がひどい場合は、手術を行います。とくに、鼻中隔弯曲症を合併している場合は、鼻中隔矯正術と下鼻甲介切除術(かびこうかいせつじょじゅつ)を組み合わせた手術が有効です。また、下鼻甲介粘膜を電気やレーザーで焼灼(しょうしゃく)(焼いて取り除くこと)したり、アルゴンプラズマで凝固したり、下鼻甲介粘膜、下鼻甲介骨を切除したりして、肥厚している粘膜を減らすことで鼻づまりをとります。
病気に気づいたらどうする
鼻づまり、鼻漏が長く続くようであれば、原因が何かを診断してもらうべきです。市販の点鼻薬を乱用しないようにしましょう。
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