病気事典[家庭の医学]
じかいなんこつまくえん
耳介軟骨膜炎
耳介軟骨膜炎について解説します。
執筆者:
たてもと耳鼻咽喉科クリニック院長
立本圭吾
どんな病気か
耳介は、軟骨の上に薄い皮下組織をおいて皮膚におおわれています。とくに耳介前面は皮下組織が少ないために、感染や機械的刺激により炎症が軟骨膜に容易に及びます。ひとたび軟骨膜に炎症が及ぶと耳介全体に波及し、耳介の腫脹(しゅちょう)(はれ)・血腫・変形を来します。
原因は何か
耳介の外傷(虫刺され、裂創(れっそう)、打撲(だぼく)、圧挫(あつざ))や感染に続いて発症します。ヘルメット着脱時の圧挫に伴う耳介血腫(じかいけっしゅ)およびピアスなどの機械的刺激に感染が加わり、耳介軟骨膜の炎症と、それに起因する軟骨膜下の浮腫や滲出液(しんしゅつえき)および出血が生じます。
感染の原因菌はグラム陰性菌、とくに緑膿菌(りょくのうきん)が多いとされ、ほかにブドウ球菌やプロテウス属などが検出されます。時に耳介ヘルペスの続発症としてみられることもあります。
症状の現れ方
感染初期は耳介表面の発赤と軽度の腫脹ですが、徐々に増強して、厚ぼったい感じになります。腫脹の度合いに応じて灼熱感(しゃくねつかん)や疼痛を伴うことが多く、初期の処置が奏効しないと、発赤・腫脹が進行し軟骨膜の肥厚や軟骨の変形を生じます(図11)。
検査と診断
耳介に鈍的な外傷性の衝撃が加わり、耳介軟骨と軟骨膜との間が離れて血液がたまった結果生じる耳介血腫や、全身の軟骨が系統的に侵される自己免疫疾患である反復性多発性軟骨炎との区別が必要です。
治療の方法
できるだけ早期に炎症を鎮めなければ耳介の変形を来すので、広域スペクトラム抗生剤(効く菌の範囲が広い)と消炎鎮痛薬の投与および局所の冷却に努めます。炎症が高度の場合は、副腎皮質ステロイド薬の全身投与や軟膏塗布・局所注射などが必要になります。
病気に気づいたらどうする
耳介がはれたら、まずはアイシングが基本です。ただし、直接氷温で冷やすと低温やけどや凍傷(とうしょう)が生じるので、氷が直接患部に接しないようにしてください。
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