病気事典[家庭の医学]

かたいこつこっかんぶこっせつ

下腿骨骨幹部骨折

下腿骨骨幹部骨折について解説します。

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どんな外傷か

下腿には大きな脛骨(けいこつ)があり、その外側に細い腓骨(ひこつ)が存在します。骨幹部とは、図27に示すように、脛骨上方の最大の横幅の平方に含まれる部分を脛骨の近位部とし、遠位部も同様に脛骨下方の最大横幅の平方の部分として、その間の部分が骨幹部と定義されています。近位部・遠位部ともに、骨折に伴う膝および足関節の機能障害に注意が必要ですが、骨幹部の骨折では曲ってつながる以外には関節の障害は起こりません。

受傷の原因としては、直接に下腿に外力が加わることが多く、交通事故では大きな力が作用して起こります。皮膚の直下に脛骨があるため開放骨折が多くみられ、多発外傷となることも少なくありません。また、スポーツ中や転倒などで足部が固定された状態で下腿をねじると、間接的にねじれの力がはたらき、らせん状の骨折や斜めの骨折を生じることもあります。

症状の現れ方

直後から痛みがあり、歩けません。骨折のずれが大きいと下腿が曲って変形します。開放骨折では骨折端が皮膚を突き破り、皮膚に小さな傷がみられます。

また、この部位はコンパートメント症候群の発生が多いところです。これは、骨折により下腿筋肉群の閉ざされた区間(コンパートメント)が出血やはれで内圧が高まり、増強する疼痛と強い腫張(しゅちょう)(はれ)や圧痛(押すと痛むこと)がみられるものです。放置すると筋肉の壊死(えし)を起こすことがあるので、早期の筋膜切開が必要となります。

検査と診断

前後、側面の2方向のX線撮影を行いますが、撮影時には骨折部位に粗暴な操作が加わらないようにしなければなりません。

また、間接的な介達外力による骨折では、腓骨の骨折部位が脛骨骨折の部位と異なり膝関節に近いことがあるので、下腿全長のX線をとり腓骨の骨折を見逃さないようにしなければなりません。

開放骨折では、皮膚や筋肉などの軟部組織の損傷程度を調べ、傷の部位からの細菌の検査をしておきます。

治療の方法

この骨折は若い人に好発することから、機能回復と早期の社会復帰を目指して治療法を選択しなければなりません。かつては保存的治療が行われてきましたが、新しい固定器具の開発によって手術的治療が主流となっています。ただし、骨の成長線が残っている小児では、多少のずれは許容範囲とされることもあり、多くは保存的に治療します。

ずれのない骨折、ずれがあっても整復したあとには安定している骨折などは保存的に治療します。しかし、長期の固定が問題点であり、足関節の動きの硬さが後遺症となることがあります。このことから手術的に治療することが多く、手術により膝や足関節の動きの制限を来すことなく、安定した成績がえられるようになっています。

手術法としては、骨折部分を太い釘で固定する髄内釘(ずいないてい)がよく行われます(図28)。また、最近では骨折部は切開せず、離れた部位から小切開を加えてプレートを挿入し、骨折部をネジで固定する低侵襲性の手術も普及しつつあります。

合併症はどんなものか

開放骨折では骨折部に細菌が入り、うまく治らないと骨髄炎(こつずいえん)を併発して治療に難渋します。また、コンパートメント症候群では早期の治療をしないと下腿の筋肉が壊死に陥り、足や足趾(そくし)の運動障害を起こします。

応急処置はどうするか

下腿部が大きく変形して痛みで歩行できないため、副木(ふくぼく)をしてすぐに整形外科へ連れて行きます。開放骨折が多いので創部が不潔にならないように、きれいなガーゼやタオルなどで圧迫します。

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