病気事典[家庭の医学]
あるこーるせいしんけいしょうがい
アルコール性神経障害
アルコール性神経障害について解説します。
執筆者:
神経内科津田沼神経研究所所長/東邦大学名誉教授
栗原照幸
どんな病気か
アルコールの毒性というより、いっしょによく起こるビタミン欠乏による症状がみられることが多いようです。
アルコール依存症の人は飲酒量が多く、日本酒換算で1日5合、ビールで5本以上毎日飲んでいることがあります。このような場合は、食事をバランスよくとることができず、ビタミン
このようなことから、ビタミン欠乏性の障害が神経のいろいろな部位で起こります。
症状の現れ方
「アルコール性末梢神経障害」は、手足の末梢にしびれ感、痛み、脱力、筋萎縮(きんいしゅく)を来します。「ウェルニッケ脳症」では、無欲状態になって、眼球運動障害(眼があまり動かなくなる)、眼振(がんしん)(眼球がリズミカルに動く)、失調性歩行(酔ったようにふらふら歩く)が起こります。
「アルコール性小脳失調症」では、1カ月以上大量の飲酒をしていると、とくに両足のバランスがとれなくなり、フラフラして歩行が困難になります。
アルコールをやめると手が震えたり、せん妄(もう)(意識の障害により、集中力の低下や、錯覚を起こす)状態になってしまうのは、禁断症状で「振戦(しんせん)せん妄」といいます。飲酒をやめてから1~2日すると、体からアルコールが抜けて「けいれん発作」が起こることがあります。
アルコールを多飲すると歩行が不安定になるので、頭部外傷も起こりやすくなります。
以上のようにいろいろな病気がアルコールに関係して起こります。
検査と診断
問診して飲酒量が多ければ、末梢血検査、肝機能検査、血中ビタミンレベル、末梢神経伝導検査、脳のMRIなどの検査をして、アルコールまたはビタミン欠乏症によるどの疾患が起こっているのかを明らかにすることができます。
治療の方法
飲酒をやめ、ビタミン
そしてバランスのよい食事をすすめます。精神的な不安をとるために、解決できる問題は医師に誠実に相談相手になってもらうことが大切です。アルコールを多飲する人のなかには、家庭や仕事のうえで問題をかかえている場合があるので、よく話を聞いて相談にのってあげる友人や医師が必要です。
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