病気事典[家庭の医学]
げんぱつせいせんもうきのうふぜん
原発性線毛機能不全
原発性線毛機能不全について解説します。
執筆者:
順天堂大学医学部呼吸器内科学助教
吉見 格
順天堂大学医療看護学部専門基礎内科学教授
植木 純
どんな病気か
気道上皮の線毛や精子の鞭毛(べんもう)の微細構造の異常など、全身性に線毛運動が障害される疾患です。気道上皮の線毛は吸入した異物や細菌を体外に排出する重要な役割を担っています。この線毛のはたらきが障害されると、幼少期から慢性副鼻腔炎(まんせいふくびくうえん)、慢性気管支炎や肺炎にかかることが多く、気道感染を繰り返しやすくなります。また精子の運動障害により、男性不妊症の原因ともなります。
原発性線毛機能不全のなかでも、気管支拡張症、内臓逆位(ないぞうぎゃくい)、慢性副鼻腔炎の3症状を有するものは、カルタゲナー症候群と呼ばれています。
原因は何か
先天性疾患です。遺伝様式としては、常染色体劣性(じょうせんしょくたいれっせい)遺伝ですが、常染色体優性(ゆうせい)遺伝や伴性劣性(はんせいれっせい)遺伝、さらには遺伝子の突然変異による偶発的発症も報告されています。
本疾患の発生頻度は、2万~6万人に1人といわれており、その約半数がカルタゲナー症候群を呈するといわれています。
症状の現れ方
線毛運動不全のため、幼児期からの慢性副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症(ちくのうしょう))、中耳炎や慢性気管支炎・気管支拡張症が必発となり、このため慢性(まんせい)の湿性咳嗽(しっせいがいそう)(湿った咳(せき))や鼻漏過多(びろうかた)を認めます。また精子の鞭毛運動障害により男性不妊の原因となったり、嗅覚障害を伴う場合も多いようです。
検査と診断
前述のような症状が幼少の頃から認められる場合は、本疾患を疑います。線毛の構造や機能異常の診断が重要であり、精子の運動性の観察や、鼻粘膜の線毛の微細構造の観察などが必要となります。
治療の方法
本疾患に対する根治療法はありません。日頃からの喀痰(かくたん)の管理(適切な水分摂取、気管支拡張薬や喀痰調整薬などの薬物療法、体位排痰法など)が重要となります。また気道感染の合併による急性増悪に注意が必要です。このためインフルエンザワクチン接種を毎年受けるなどの対応も必要となります。
病気に気づいたらどうする
呼吸器内科や耳鼻科を受診してください。また、小児期であれば小児科を受診します。
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