病気事典[家庭の医学]
ていけつあつしょう
低血圧症
低血圧症について解説します。
執筆者:
横浜南共済病院循環器内科部長
西崎光弘
どんな病気か
低血圧症とは、一般に収縮期血圧が100㎜Hg未満をいうことが多く、まったく症状がない人から、立ちくらみ、めまい、失神(一時的な意識消失発作)、全身倦怠感(けんたいかん)などの症状を伴う例までさまざまです。このような症状が認められる場合には、低血圧症として治療や管理の対象になることがあります。
低血圧症では、安静時にすでに血圧が低い場合や、立位を維持している時や体位変換時、とくに臥位(がい)(寝た状態)や座位から立ち上がった時に血圧が下がる場合があり、原因疾患と体位との関係は非常に重要です。
原因は何か
低血圧を起こす原因として、全身に循環している血液量(循環血液量)の減少や心臓から送り出す血液量(心拍出量)の低下、末梢血管(細かい血管)の抵抗や血液の粘稠度(ねんちゅうど)(粘りけ)が減少することが考えられています。
一般に低血圧症では、原因となる病気は必ずしも認められず、原因疾患が明らかでない場合は、本態性(ほんたいせい)低血圧症と呼ばれています。
一方、原因となる病気が認められる場合は症候性(二次性)低血圧症といわれ、起立に伴って認められる場合は起立性(きりつせい)低血圧として分類されています。
(1)原因疾患の有無からみた低血圧症の分類
a.本態性低血圧症
b.症候性(二次性)低血圧症
c.起立性低血圧症
このように原因疾患の有無からみた分類と異なり、症状の出現の早さからみた分類があります。
(2)症状の経過からみた低血圧症の分類
a.急性低血圧症
b.慢性低血圧症
急性低血圧症が、ショックや急性の循環不全を示すような急激な症状が出現する場合であるのに対し、慢性低血圧症は急性低血圧症のように激しい症状を示すことなく、症状がゆっくりと出現し、持続します。
急性低血圧症は慢性低血圧症に比べると重症であることが多く、ほとんどの患者さんでは救急処置が必要となります。
急性低血圧を示す原因として、
(1)出血・脱水などの循環血液量の減少や重症感染症に伴う敗血症(はいけつしょう)ショック
(2)心不全などの心機能低下(心臓のポンプ作用の低下)や重症不整脈
(3)過剰な降圧薬の投与や睡眠薬・麻酔薬などの投与による薬物中毒
などがあげられます。
症状の現れ方
本態性低血圧症、症候性低血圧症、起立性低血圧症などそれぞれ異なった症状の現れ方を示します。
本態性低血圧症は慢性低血圧症を示すため、症状は持続的であるの対し、症候性低血圧症は原因疾患の違いにより、急性または慢性の症状発現を示します。一方、起立性低血圧症では体位の変換に伴い急性に症状が出現します。
検査と診断
全身の倦怠感、めまい、立ちくらみなどの症状を認め、常に血圧が低い状態を示し、明らかな原因疾患を認めない場合は、本態性低血圧症と診断されます。
一方、症状の出現様式と関係なく、原因疾患が明らかな場合は症候性(二次性)低血圧症と診断されます。
さらに、起立時のみ血圧低下を示し症状が出現する場合は起立性低血圧症と診断されますが、起立性低血圧症は、本態性低血圧症または症候性低血圧症に併発することもしばしばあります。
治療の方法
まず、症候性低血圧症の有無の鑑別が重要です。原因疾患が認められる症候性低血圧症の場合は、原因疾患の治療が優先されます。
一方、原因疾患が認められない本態性低血圧症の場合は、愁訴に対して食事療法、運動療法、生活リズムの調整などの生活指導を行い、それでも効果が認められない時は薬物療法を試みます。
病気に気づいたらどうする
日常生活に影響を及ぼす症状が認められ、血圧測定が自宅で可能な場合は、低血圧の有無を調べるのが重要です。
低血圧症が疑われた場合は、低血圧症の病気分類により生活指導および治療法が異なるので、診断および原因疾患の精査のため専門医(内科)に受診することが大切です。
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