病気事典[家庭の医学]
しっぺいこうぞうのへんか
疾病構造の変化
疾病構造の変化について解説します。
執筆者:
東京慈恵会医科大学大学院医学研究科健康科学教授
和田高士
死亡率の年次推移
主要死因別にみた死亡率の年次推移を図3‐Aに示します。昭和20年代以降、結核による死亡が大きく減少して、日本の死因構造の中心は感染症から生活習慣病に大きく変化しました。
昭和40年代以降は、脳血管疾患は高血圧対策が効を奏して、着実に減少してきました。その一方で、生活習慣病の終着駅でもある心筋梗塞を中心に心疾患は増加し続け、現在第2位となっています。悪性新生物(がんなど)は増加し続け、1981年以降は第1位となっています。
医療費の増加
昨今の医療費の変化を図3‐Bに示します。平成27年度の国民医療費は42兆3,644億円、前年度の40兆8,071億円に比べ3.8%の増加となっています。人口一人当たりの国民医療費は33万3,300円、前年度の32万1,100円に比べ、3.8%の増加となっています。国民医療費の国内総生産(GDP)に対する比率は約8%、国民所得(NI)に対する比率は約11%となっています。基本的には右肩上がり、つまり医療費が高騰しています。なぜ、このような変化が起きてきたのでしょうか。
ひとつの原因としては、人口の老齢化があげられます。しかし、それだけではありません。高度経済成長のなかで、食生活をはじめ、さまざまな生活習慣が変化してきました。遺伝的体質的素因もあることは確かですが、多くの病気が日常の生活習慣と深い関わりをもっています。
糖尿病などのように、遺伝的素因が大きく影響する病気も、戦中戦後の食糧難の時代には、患者さんはほとんどいませんでした。栄養過多の今日、患者さんの数は数十倍にも増えました。
がんのように、老化とのみ関わりがあるようにみえる病気でも、この30~40年来、胃がんや子宮がんが減り、代わって肺がんや乳がん、大腸がんが増えてきたのをみてもわかるとおり、生活環境や食習慣との関係が、きわめて密接であることがわかります。
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