病気事典[家庭の医学]
こころとからだのかんけい
こころとからだの関係
こころとからだの関係について解説します。
執筆者:
中部学院大学大学院人間福祉学研究科教授
吉川武彦
解説(概論)
人は「身体的・肉体的」存在であるとともに「精神的・心理的」存在でもありますが、同時に「社会的・文化的」存在です。これを平たくいえば「からだ」があってこそ人なのですが、それとともに「こころ」あっての人であり、また「つながり」あっての人なのです。人は人とつながるだけでなく、その人が生まれ育ち、過ごした地域の文化を受けて生きているのです。
本項の『こころの病気』を編集するにあたって、常に心がけたのはこのことです。これを具体的にいえば、『こころの病気』を単に『精神病』とか『精神疾患』というようにとらえず、この社会のなかで生起するこころに関わる問題をできるだけ広くとらえ、その問題がなぜ起こるのか、その問題をどのように解決したらいいのかを皆さんと一緒に考えたいと思いました。
つまり『どんな病気』かを論じるのではなく、そしてその病気を『どのように治療するか』を論じるのではなく、なぜそのような『状態』に陥ってしまうのかとか、そこから抜け出すには『どうしたらいいのか』という視点で『こころの病気』と考えられていることを論じてみようと思ったのです。
人を人たらしめる「こころ」ですが、その「こころ」は確かに「脳」が生み出すものです。だからといって「脳」の形やはたらきが悪いからといって「こころ」がゆがむというものでもありません。
確かに「脳」がうまくはたらいてくれないと「こころ」をうまく紡(つむ)いでもらえないのですが、これを「こころの病」とか「こころが病んでいる」とはいえません。仮に「脳」の形が悪かったりはたらきが悪いとしても、その「脳」がはたらけるような環境を用意するれば、その「脳」もよいはたらきをしてくれることがわかってきたからです。
それを少々硬い言葉でいえば、その「脳」がよいはたらきをするように「脳」を取り巻く「環境」を整えることが重要だということになります。その「環境」には「体内環境」と「体外環境」があります。
この「体内環境」は、いわばからだの調子といったもので栄養や運動などで整えられるものですし、血圧や心臓機能によって支えられるものといっていいでしょう。
「体外環境」とは先に示した「つながり」であり、「社会的・文化的」存在としての人をめぐる環境なのです。つまり「体外環境」には、人間関係や自然を想定する必要があります。こころがうまくはたらくためには「脳」をめぐる「体外環境」、つまりその人を取り巻く人間関係や自然環境が整えられていないといけないというわけです。
情報提供元 :
(C)株式会社 法研
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