病気事典[家庭の医学]
しきゅうきんそう(じっしつ)えん
子宮筋層(実質)炎
子宮筋層(実質)炎について解説します。
執筆者:
川口誠和病院産婦人科部長
竹内 亨
原因は何か
子宮筋層における細菌感染が原因となります。子宮内膜炎(しきゅうないまくえん)が子宮筋層にまで波及することで起こることが多いのですが、帝王切開術や子宮筋腫核出術(きんしゅかくしゅつじゅつ)などの手術後に起こることもあります。子宮内膜炎と同様に、感染経路は上行性感染によるものが多く、まれにリンパ行性、血行性、下行性感染も認められます。起炎菌としては、大腸菌、腸球菌、連鎖球菌(れんさきゅうきん)、ブドウ球菌、淋菌(りんきん)、結核菌(けっかくきん)、バクテロイデス、ペプトコッカスなどがあります。
月経が定期的にある女性では、子宮内膜の機能層は周期的にはがれ落ちるので細菌が侵入してきても月経時に排出されてしまうこともありますが、閉経後、分娩後や流産後の女性では周期的な子宮内膜の剥脱(はくだつ)がないので上行性感染を起こしやすいと考えられます。また、子宮内膜炎と同様に子宮内操作時に細菌が侵入することもあります。
症状の現れ方
子宮内膜炎と同様の症状が現れますが、子宮内膜炎の時よりもその症状は重症化する傾向があります。下腹部の不快感、下腹部痛、発熱などの症状がみられることが多いのですが、膿性帯下(のうせいたいげ)、不正出血などもみられることがあります。
検査と診断
内診により、子宮の圧痛と腫大が認められます。炎症がさらに周囲に拡大すると付属器領域やダグラス窩(か)(子宮と直腸の間の腹膜腔)にも圧痛が認められます。子宮からの分泌物の培養検査により、起炎菌を特定します。
治療の方法
基本的には子宮内膜炎の時のように、起炎菌が特定されるまでの間は、通常広域スペクトル(効果の範囲が広い)の抗生剤を使用します。経口投与で効果が不十分な場合には抗生剤の点滴静注が必要になることもあります。また、消炎薬を併用することもあります。
流産後や分娩後では子宮収縮薬を併用して子宮内腔に残った組織の排出を促すこともあります。子宮瘤膿腫(りゅうのうしゅ)を形成している場合には、頸管(けいかん)を開大し、うみを排出する必要があります。
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