病気事典[家庭の医学]
はしゅせいけっかんないぎょうこしょうこうぐん(でぃあいしー)
播種性血管内凝固症候群(DIC)<子どもの病気>
播種性血管内凝固症候群(DIC)<子どもの病気>について解説します。
執筆者:
青森県立中央病院小児科副部長
高橋良博
弘前大学大学院医学研究科小児科学教授
伊藤悦朗
どんな病気か
さまざまな基礎疾患に伴い、血管内での血液凝固の亢進(こうしん)による全身の小血管での微小血栓の形成、その過程における血小板や凝固因子の消費と二次線溶亢進(せんようこうしん)(凝血を溶かす)による出血傾向および、微小血栓による虚血性(きょけつせい)臓器障害を示す病態の総称です。
原因は何か
さまざまな基礎疾患に伴い、組織因子(血液内皮下などに存在し、外因系凝固反応を開始する因子)の循環血液中への過剰な出現と、血管内皮細胞障害を原因として発症します。小児では白血病(はっけつびょう)などの血液造血器の腫瘍、敗血症(はいけつしょう)などの重症の感染症、新生児仮死や呼吸窮迫(きゅうはく)症候群などの新生児疾患に伴う場合が多いと報告されています。
症状の現れ方
白血病(とくに急性前骨髄性(ぜんこつずいせい)白血病)を基礎疾患とした場合は線溶亢進型DICと呼ばれ、出血症状が著しくなります。これに対して敗血症などに合併した場合は、血管内皮細胞障害が優勢で形成された微小血栓が溶けにくく、線溶抑制型DICと呼ばれ、さまざまな程度の臓器不全症状が生じます。
検査と診断
基礎疾患があり出血症状や臓器不全症状、ショック症状が認められる場合には、DICを念頭においた血液凝固系の検査が必要です。1988年の厚生省(当時)の診断基準、血小板数とFDP値(フィブリン分解産物)を重視した松田試案(表15)、新生児のDIC診断基準を参考に診断されます。
治療の方法
基礎疾患の治療を行うとともに、DICが疑われれば早期に以下のような治療を病態に応じて行います。
(1)蛋白分解酵素阻害薬
メシル酸ガベキサートやメシル酸ナファモスタットなどの蛋白分解酵素阻害薬は、抗凝固作用と抗線溶作用を併せもち、日本では第一選択として用いられることが多いです。
(2)ヘパリン
アンチトロンビンⅢと結合して抗凝固作用を示します。
(3)アンチトロンビン濃縮製剤
抗凝固作用と、比較的大量に投与された場合は抗炎症作用もあるとされています。
(4)補充療法
血小板や新鮮凍結血漿(けっしょう)の補充を適宜行います。
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情報提供元 :
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