病気事典[家庭の医学]
しょうかせいかいよう(い・じゅうにしちょうかいよう)
消化性潰瘍(胃・十二指腸潰瘍)
消化性潰瘍(胃・十二指腸潰瘍)について解説します。
執筆者:
順天堂大学医学部小児科思春期科学助教
春名英典
どんな病気か
消化性潰瘍とは、何らかの原因で胃・十二指腸の粘膜が深く損傷した状態になっていることをいいます。近年、子どもの領域でも内視鏡検査が普及してきたことにより、確定診断されるケースが少なくありません。
また、ヘリコバクター・ピロリ(以下、ピロリ菌)感染が、消化性潰瘍の一因であることがわかってきています。胃潰瘍の多くはピロリ菌陰性の急性潰瘍で6歳以下に、十二指腸潰瘍の多くはピロリ菌陽性の慢性潰瘍で10歳以上に多い傾向があります。
原因は何か
原因はピロリ菌陽性と陰性によって2つに分けられます。陽性例では、ピロリ菌の持続感染による潰瘍であり、陰性例では、ストレス性、鎮痛薬やステロイド薬による薬物性、好酸球性(こうさんきゅうせい)胃腸炎、メネトリエ病のほかに、クローン病、非常にまれですがゾリンジャー・エリスン症候群などが原因として考えられます。
症状の現れ方
胃潰瘍は急性潰瘍が多く、突然症状が現れます。それ以外は胃潰瘍、十二指腸潰瘍とも類似の症状を示し、両者の区別は症状だけからは困難です。両者とも腹痛、吐き気、嘔吐、吐血やタール便を伴います。乳幼児では大量吐血をしたり、腸に孔(あな)があき(腸管穿孔(せんこう))、緊急手術になることもあります。
一般に十二指腸潰瘍は、空腹時の腹痛を訴えますが、食事をとると軽減します。多くはみぞおち周囲からやや右よりを痛がります。嘔吐や貧血を伴うこともあります。
検査と診断
前記の症状から消化性潰瘍が強く疑われる場合は、上部消化管内視鏡検査が極めて有用ですが、子どもの内視鏡が可能な施設は限られているのが現状です。造影検査も行われますが、子どもの潰瘍は浅く、診断がつかないことがあります。
ピロリ菌感染の検索は、内視鏡で採取した粘膜の病理組織検査、培養などのほかに、血清抗体や尿素呼気(にょうそこき)試験の結果を用いて診断します。
治療の方法
出血がひどい場合は緊急内視鏡で止血し、必要であれば輸血をします。内視鏡的に止血が困難な場合や腸管穿孔を来した場合は、外科手術の適応となります。そのような合併症がなければ、予後は良好です。
治療の中心は、酸分泌抑制薬(
5歳以上の子どもでは、除菌成功後の潰瘍再発率は2~3%と、ほとんどありません。
病気に気づいたらどうする
胃・十二指腸潰瘍というと、成人の病気という先入観がありますが、新生児から思春期までのどの年齢層でも起こりえます。吐血やタール便がみられたらもちろんのこと、腹痛が続く場合も小児科医の診察を受けることが必要です。
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情報提供元 :
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