病気事典[家庭の医学]
めっけるけいしつ
メッケル憩室
メッケル憩室について解説します。
執筆者:
新潟大学医学部小児科学助教 長崎啓祐
どんな病気か
メッケル憩室は最も頻度の高い腸管の奇形であり、発生頻度は無症状例を含めると1~2%といわれ、男児が女児の2倍多い傾向があります。その位置は回盲(かいもう)(小腸から大腸への移行部)末端から40~60㎝までの口側にあることが多いとされています。
この憩室の中に小腸の組織だけでなく、胃粘膜や膵臓の組織が入っていることがあります。メッケル憩室はそれ自体では無症状ですが、潰瘍(かいよう)、炎症(えんしょう)、穿孔(せんこう)、腸重積(ちょうじゅうせき)などを伴うと後述のような症状が出現します。
症状の現れ方
憩室の中に入り込んでいる胃粘膜の酸分泌により、消化性潰瘍を生じ、消化管出血を来します。そのためタール便(黒い便)や新鮮血便、貧血になります。
出血は幼児期に多く、前ぶれなく突然大量の下血をみることがあります。また腸重積や腸閉塞(ちょうへいそく)(イレウス)などを起こし、腹痛、嘔吐、腹部膨満、ショックなどを来すことがあります。
憩室炎という炎症を起こし、腹痛や発熱などを来し、虫垂炎との区別が問題になることもあります。
検査と診断
放射性元素テクネシウムによるシンチグラフィを行います。テクネシウムは通常胃粘膜のみに集まるので、胃とは別の部位に集積があれば診断が確定します。
その他造影CT検査、小腸内視鏡検査、内視鏡的逆行性(ぎゃっこうせい)回腸造影などでも診断できるようです。
治療の方法
手術時に偶然見つかった症状の無いメッケル憩室に関しては、切除すべきか否かは決まった方針がないようです。
症状を伴うメッケル憩室に関しては、全身症状をよくしたうえで、手術により憩室を切除または腸管切除を行います。
病気に気づいたらどうする
5歳以上の繰り返す腸重積、タール便や血便、虫垂炎に似た症状などからメッケル憩室を疑った場合には、小児科または小児外科で積極的にシンチグラフィを行います。診断が確定すれば、小児外科を受診することになります。
子どもの病気を読んだ人によく読まれている記事
子どもの病気でよく読まれている病気解説
情報提供元 :
(C)株式会社 法研
|
執筆者一覧
掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。