病気事典[家庭の医学]

しんせいじしゅっけつけいこう

新生児出血傾向

新生児出血傾向について解説します。

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どんな病気か

出血傾向とは、何らかの原因で血が止まりにくくなる状態をいいます。血液が血管のなかをスムーズに流れるためには、血管の壁が正常で、血液が適度に固まったり(凝固(ぎょうこ))、固まった血液が適度に溶けたり(線溶(せんよう))する必要があります。

血が止まりにくい場合には、血管がもろい、凝固に必要な血小板や凝固因子の不足や機能低下、線溶因子の異常により過度に血液が固まらないなどが考えられます。凝固・線溶に関わる因子は数十種類に及びますが、新生児期には成人に比べこれらの因子が低値かつアンバランスであるため、仮死(かし)、低酸素血症、アシドーシス、感染症などにより容易に出血傾向を来します。

出血傾向を来す主な疾患

(1)血小板数の減少

特発性血小板減少性紫斑病(とくはつせいけっしょうばんげんしょうせいしはんびょう)の母親から出生した新生児、新生児同種免疫性(どうしゅめんえきせい)血小板減少性紫斑病(母子間の血小板型不適合による)、播種性血管内凝固(はしゅせいけっかんないぎょうこ)症候群、先天性感染、重症感染症、新生児仮死、多血症、子宮内発育遅延など

(2)血小板機能の異常

血小板無力症(けっしょうばんむりょくしょう)など

(3)凝固因子の減少や機能異常

血友病(けつゆうびょう)A(第Ⅷ因子)、血友病B(第Ⅸ因子)を含む各種凝固因子欠乏症、ビタミンK欠乏症(ビタミンKは一部の凝固因子を作るのに必要なため)、播種性血管内凝固症候群、肝機能障害など

(4)線溶の亢進(こうしん)

線溶因子の増加(溶かす因子が増加)、線溶阻止因子の減少(溶かすことを阻止する因子が低下)

(5)その他

血栓症に伴う出血症状、新生児血小板減少を起こしうる薬物の母親への投与(アスピリンや抗うつ薬、サイアザイド系利尿薬)など

出血部位

出血する部位は、皮膚、へそ、鼻腔などの表面から、頭蓋内、気道・肺胞内、腹腔内、消化管内、腎、副腎などの深部にある臓器に起こることもあります。

検査と診断

家族内に出血傾向がある場合は、診断の重要な手助けになります。一般的には血小板数と、簡易な凝固能検査(プロトロンビン時間や活性化部分トロンボプラスチン時間など)、肝機能検査、CRP(炎症反応)などから、総合的に診断します。凝固因子の不足が疑われる場合には、それぞれの凝固因子を定量的に測定し、確定診断します。

治療の方法

(1)仮死、低酸素血症、アシドーシス、感染症などが元の疾患となっている場合には、当然ながらこれらの治療が必要になります。

(2)各種凝固因子の欠乏に対しては、凝固因子の補充(各因子の補充または新鮮凍結血漿(けっしょう))

(3)線溶阻止因子の欠乏に対しては、抗線溶薬

(4)血栓形成後の出血傾向に対しては、抗凝固療法(ヘパリン)、血栓溶解療法(ウロキナーゼ)、補充療法、ワーファリン内服、外科的血栓除去など

(5)播種性血管内凝固症候群に対しては、抗凝固療法(ヘパリン)、合成蛋白分解酵素阻害薬(FOY、フサン)、アンチトロンビンⅢ(アンスロビン、ノイアート)、新鮮凍結血漿、血小板輸血、交換輸血など

(6)特発性血小板減少性紫斑病の母体から生まれた子どもに生じた血小板減少や同種免疫性血小板減少性紫斑病に対しては、免疫グロブリン大量療法、ステロイドホルモン、交換輸血など

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