病気事典[家庭の医学]

こどものびょうきのげんきょう

子どもの病気の現況

子どもの病気の現況について解説します。

執筆者:

心の健康と生活習慣

文部科学省「児童生徒の心の健康と生活習慣に関する調査(2003年)」によると、心の健康度が低い中学・高校生は生活習慣が悪く、逆に心の健康度が高い中学・高校生は生活習慣がよいという結果が出ています。たとえば、心の健康度が低いほど、「朝食を食べなかった」、「家族との会話がなかった」、「寝る時間が決まっていない」という回答の割合が高く、逆に心の健康度が高いほど、「家族に相談する」、「よく体を動かす」、「すぐ眠りにつき、今朝すっきり目が覚めた」という回答の割合が高かったようです。したがって、生活習慣の改善が心の健康問題の予防や解決につながる可能性があるといえます。

なお、小学生は心の健康度と生活習慣の関連がはっきりせず、おそらく親との関係がより密着しており、生活が中学・高校生ほど多様化していないためではないかと考えられます。ですから、小学生の時期に心の健康とよい生活習慣を育むことがとても大切です。日本小児科学会の調査でも、テレビを見る時間やコンピュータゲームで遊ぶ時間が長いほど、心の問題が起こりやすいことが指摘されています。

感染症と予防接種

麻疹(ましん)(はしか)は、医学の進んだ今の時代でも死に至ることのある怖い感染症です。予防接種による免疫は一生続くと考えられていましたが、小学校高学年ころから抗体価が急激に減り、感染することがわかってきました。このため、2006年4月1日から麻疹風疹(ふうしん)混合生ワクチン(MRワクチン)の2回接種法(1歳と小学校入学前それぞれ1年間)が始まりました。さらに、2008年から5年間、中学1年と高校3年生を対象に、追加接種が行われています。

風疹は麻疹より接種率が低いうえ、ワクチンによる免疫はやはり年齢とともに減るため、風疹にかかりやすい人は麻疹の2〜数倍いると推計されています。妊娠初期に風疹にかかると、さまざまな奇形が起こる先天風疹が問題になります。

インフルエンザ菌b型(Hib)感染症は5歳未満に多くみられ、重症化しやすい特徴があります。なかでもHib髄膜炎は、年間で5歳未満人口10万人あたり8・6〜8・8人に発症し、極めて重い経過をとります。予防には、小児用ワクチン接種が有効です。欧米では20数年前から接種が行われていますが、日本では2008年から始まりました。不活化ワクチンで、三種混合ワクチンと一緒に4回の接種が推奨されています。任意接種のため、費用がかかるのが難点です。

インフルエンザとタミフル

抗インフルエンザ薬のタミフルは、日本では2001年から販売されています。10歳以上の未成年者で、本剤服用後に異常行動が報告されたことから、厚生労働省は2007年、この年代には原則として使用を差しひかえるよう勧告しました。しかし、インフルエンザにかかった時の異常行動は以前から経験されており、日本小児科学会は、本剤服用の有無にかかわらず保護者に「言動や行動に注意し、よく経過をみるように」すすめています。

小児気管支喘息(しょうにきかんしぜんそく)(治療・管理ガイドライン)

日本小児アレルギー学会は、3年ぶりに改訂した「小児気管支喘息・管理ガイドライン2008」を発表しました。長期管理の薬物療法プランでは、新たに生後6カ月から使用可能な吸入ステロイド薬が加わったほか、新しい吸入薬(長時間作用型β2刺激薬キシナホ酸サルメテロール・吸入ステロイド薬プロピオン酸フルカチゾン複合剤)も加わりました。最近の治療法の進歩により、小児気管支喘息の重症例はかなり少なくなりました。

食物アレルギー診療の手引き

食物アレルギーが世界的に増加しており、厚生労働科学研究班による「食物アレルギーの診療の手引き2008」が公開されています。食物アレルギーは乳児のアトピー性皮膚炎発症に関わることが多く、鶏卵(6割強)、牛乳(約2割)、小麦(1割未満)が主な原因になります。日本では2002年から、「アレルギー物質を含む食品表示」が義務づけられています。また、診断のため入院させ、原因と考えられる食物を少しずつ摂取させる食物負荷試験が2006年に保険適用になりました。しかし、極端な食物制限や、医師や栄養士の指導を受けず家族の判断だけで行った食物除去の結果、身長が伸びなくなったり、くる病になったりする乳幼児例がしばしば報告されています。乳幼児期は、とくに栄養バランスが大切であり、正しい診断に基づく食物除去の指導が求められます。

      情報提供元 : (C)株式会社 法研 執筆者一覧
      掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。