エイズの治療は,ヌクレオシド系および非ヌクレオシド系の逆転写酵素阻害薬(
エイズ治療薬(1))とHIVプロテアーゼ阻害薬(
エイズ治療薬(2))の3種類の薬品を組み合わせて用いることで大きく改善されました。しかし,耐性ウイルスの出現,あるいはさまざまな副作用により服薬継続が困難な場合などの問題も生じ,上記3種類とは異なる作用機序の薬品が求められていました。ここで解説するのは,その新しいタイプのエイズ治療薬です。
ラルテグラビルカリウムとドルテグラビルナトリウムは,HIVウイルスの複製に必要な3つの酵素のひとつであるHIVインテグラーゼの触媒活性を阻害して,HIVウイルスの増殖を抑えます。
マラビロクは,HIVウイルスに感染しにくい人が存在することから開発が始まりました。特に感染早期において多い,細胞上のCCケモカイン受容体5(CCR5)を足がかりに細胞内に侵入するタイプのHIVウイルスを,細胞上のCCR5と選択的に結合することにより細胞内への侵入を阻害します。その作用から予防薬としての可能性も考えられています。どちらも必ず,他のタイプのエイズ治療薬と併用します。
また,2013年4月に薬価収載されたスタリビルド配合錠と2016年6月に薬価収載されたゲンボイヤ配合錠は,インテグラーゼ阻害薬,2種の逆転写酵素阻害薬およびそれらが体内で代謝されるのを遅らせる代謝酵素(CYP)阻害薬を組み合わせた配合薬です。2015年3月に薬価収載されたトリーメク配合錠は,インテグラーゼ阻害薬に2種の逆転写酵素阻害薬を組み合わせた配合薬です。現在,エイズ治療は,複数の抗HIV薬を組み合わせて使用する多剤併用療法が標準ですが,組み合わせにより服用回数,服用時点が異なったり,服用錠数が多くなる問題点があります。本剤は,1日1回1錠で服用が完結するため,のみ忘れなどにより治療効果が弱まる可能性を小さくできます。