<警告>(1)本剤の投与により,結核,敗血症を含む重い感染症および脱髄(だつずい)疾患(多発性硬化症など)の悪化などが報告されており,また,本剤との関連性は明らかではないが,悪性腫瘍の発現も報告されています。本剤が疾患を完治させる薬剤でないことも含め,これらの情報を患者に十分説明し,患者が理解したことを確認したうえで,治療上の有益性が危険性を上まわると判断される場合にのみ投与すること。また,本剤の投与において,重い副作用により致命的な経過をたどることがあるので,緊急時の対応が十分可能な医療施設および医師が使用し,本剤投与後に副作用が発現した場合には,主治医に連絡するよう患者に注意を与えること。
(2)感染症:(a)敗血症,真菌感染症を含む日和見(ひよりみ)感染症などの致死的な感染症が報告されているため,十分な観察を行うなど感染症の発症に注意すること。(b)播種性(はしゅせい)結核(粟粒(ぞくりゅう)結核)および肺外結核(胸膜,リンパ節など)を含む結核が発症し,死亡例も報告されています。過去に結核に感染した人は,症状の顕在化および悪化のおそれがあるため,本剤の投与に先立って結核に関する十分な問診,胸部X検査に加え,インターフェロン-γ遊離試験またはツベルクリン反応検査を行い,適宜,胸部CT検査などを受けることにより,結核感染の有無を確認すること。また,結核の既感染者には,抗結核薬の投与をしたうえで本剤を投与すること。ツベルクリン反応などの検査が陰性の人では,投与後に活動性結核が認められた例も報告されています。
(3)脱髄疾患の臨床症状・画像診断上の悪化が,本剤を含むTNF抑制作用を有する薬剤でみられたとの報告があります。脱髄疾患およびその前歴のある人には投与しないこととし,脱髄疾患を疑う人や家族歴を有する人に投与する場合には,適宜,画像診断などの検査を実施するなど,十分な観察を行うこと。
(4)本剤の治療を行う前に,非ステロイド性抗炎症薬および他の抗リウマチ薬などの使用を十分に勘案すること。
(5)本剤についての十分な知識と関節リウマチおよび多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎の治療の経験をもつ医師が使用すること。
<基本的注意>*エタネルセプト(エンブレル)の添付文書による
(1)使用してはいけない場合……肺血症またはそのリスクを有する人/重い感染症/活動性結核/本剤の成分に対するアレルギーの前歴/脱髄疾患(多発性硬化症など)およびその前歴/うっ血性心不全
(2)慎重に使用すべき場合……感染症または感染症が疑われる人/結核の既感染者/易感染性の状態にある人/脱髄疾患が疑われる徴候を有する人および家族歴のある人/重い血液疾患(汎血球減少,再生不良性貧血など)またはその前歴/間質性肺炎の前歴/高齢者
(3)自己注射……(1)本剤を自分で注射する場合は,十分な教育訓練を受け,自分で確実に注射できるようになったのち,医師の管理指導のもとで行います。自己注射後,感染症など本剤による副作用が疑われる場合や自己注射の継続が困難な状況となる可能性がある場合には,直ちに自己注射を中止し,医師の管理下で慎重に観察するなど適切な処置を行います。(2)使用済みの注射針や注射器は再使用せずに,与えられた容器に入れて確実に廃棄してください。
(4)B型肝炎……本剤を含む抗TNF製剤を投与されたB型肝炎ウイルスキャリアの人または既往感染者(HBs抗原陰性,かつHBc抗体またはHBs抗体陽性)において,B型肝炎ウイルスの再活性化が報告されています。
(5)生ワクチン接種……本剤の投与中は,生ワクチン接種により感染するおそれがあるので,生ワクチン接種は行いません。小児の場合は,本剤の投与前に必要なワクチンを接種しておくことが望まれます。
(6)その他……
・妊婦での安全性:未確立。有益と判断されたときのみ使用。
・授乳婦での安全性:原則として使用しない。やむを得ず使用するときは授乳を中止。
・小児(4歳未満)での安全性:未確立。(
「薬の知識」共通事項のみかた)
<重大な副作用>(1)敗血症,肺炎,真菌感染症などの日和見感染症。(2)結核。(3)血管浮腫,アナフィラキシー,気管支けいれん,じん麻疹などの重いアレルギー反応。(4)再生不良性貧血,汎血球減少,白血球減少,好中球減少,血小板減少,貧血,血球貪食症候群。(5)多発性硬化症,視神経炎,横断性脊髄炎,ギラン・バレー症候群などの脱髄疾患。(6)間質性肺炎(発熱,せき,呼吸困難など)。(7)抗dsDNA抗体の陽性化を伴うループス様症候群(関節痛,筋肉痛,皮疹など)。(8)肝機能障害。(9)皮膚粘膜眼症候群(スティブンス-ジョンソン症候群),中毒性表皮壊死融解症(TEN),多形紅斑。(10)抗好中球細胞質抗体(ANCA)陽性血管炎。(11)急性腎不全,ネフローゼ症候群。(12)心不全。
そのほかにも報告された副作用はあるので,体調がいつもと違うと感じたときは,処方医・薬剤師に相談してください。
<その他の副作用>(1)使用を中止し,処方医へ連絡する副作用……アレルギー症状(湿疹,皮膚炎,紅斑,かゆみ,じん麻疹など)/光線過敏症/関節痛,筋肉痛
(2)おこることがある副作用……感冒(かぜ),上気道感染,咽頭炎,気管支炎,鼻漏,せき,鼻炎,喀痰,鼻閉,扁桃炎,喘息,副鼻腔炎,気管狭窄,気管支拡張症,気管支肺異形成症,血痰,肺嚢胞,嗄声(させい),胸水/白癬,皮膚乾燥,脱毛,爪の異常,膿痂疹,爪感染,凍瘡,化膿性汗腺炎,色素性母斑,爪囲炎,膿疱性乾癬,胼胝(べんち)(たこ),皮膚血管炎(白血球破砕性血管炎を含む),乾癬,乾癬様皮疹/胃腸炎,腹痛,下痢,軟便,便秘,悪心,嘔吐,食欲不振,胃部不快感,腹部膨満,消化性潰瘍,膵炎/咽喉頭疼痛,咽頭不快感,口内炎,口唇炎(口角炎など),口腔感染,口渇,舌苔(ぜったい),虫歯,歯周炎,歯肉炎,歯痛,歯の知覚過敏,歯髄炎,歯肉腫脹/難聴,中耳炎,外耳炎,耳下腺腫脹/注射部位反応(紅斑,出血斑,かゆみ,皮膚炎,疼痛,挫傷など)/尿路感染(膀胱炎など),血尿,残尿感,頻尿,腎結石,腎盂腎炎,尿糖/頭痛,浮動性めまい/感覚減退(しびれ感など),不眠,眠け,手根管症候群,錯感覚(ピリピリ感など),不安,味覚異常,嗅覚異常/動悸,期外収縮,潮紅,頻脈/結膜炎,麦粒腫,眼精疲労,眼乾燥,結膜充血,白内障,ブドウ膜炎,角膜潰瘍,眼のちらつき,眼の異常感,眼痛,強膜炎/四肢・腰・背部・臀部の疼痛,化膿性関節炎,靱帯(じんたい)障害,肩こり,滑膜炎,関節脱臼,脊椎症,ループス様症候群/インフルエンザ,帯状疱疹,膿瘍,創傷感染,化膿性リンパ節炎,蜂巣炎/月経不順,乳腺炎/出血,発熱,むくみ,胸痛,胸部不快感,疲労,倦怠感,四肢不快感,気分不良,体重減少,脱水,脱力感,けいれん
(3)検査などでわかる副作用……ALT・AST・AL-P・LDH上昇,肝機能異常/白血球・血小板・リンパ球・好酸球・好中球増加,ヘモグロビン・ヘマトクリット減少,赤血球減少,網状赤血球増加,赤血球形態異常,白血球分画異常,血沈亢進/高血圧,血圧上昇/尿沈渣,BUN増加,タンパク尿,クレアチニン上昇/コレステロール上昇,アルブミン減少,総蛋白増加・減少/胸部X線異常/CRP増加,自己抗体陽性
<併用してはいけない薬>併用してはいけない薬は特にありません。ただし,併用する薬があるときは,念のため処方医・薬剤師に報告してください。
<注意して併用すべき薬>(1)本剤との併用で白血球数が減少することがある薬剤……サラゾスルファピリジン(
サラゾスルファピリジン)