 どんな外傷か |
鼻は上2分の1を鼻骨、下2分の1を軟骨で形を保っています。鼻骨は左右の骨が切妻屋根のようになっています。鼻に外傷が加わると、屋根が崩れるように変形します。
 原因は何か |
殴られたり、バイクでトラックの荷台に追突したり、スポーツで鼻を強打した時などに生じます。外傷の性格上、全
顔面骨骨折の約10%を占め、とくに男性に多くみられます。
 症状の現れ方 |
受傷直後に
鼻出血、皮下出血、鼻の変形がみられ、間もなく鼻の付け根部分がはれます。変形は鼻すじが「く」の字形(右利きの人に殴られることが多く、鼻は右に「く」の字になる)や斜鼻(しゃび)(鼻すじが斜めになる)、鞍鼻(あんび)(鼻の付け根部分の陥没)になります(
図21・左上)。ほどなく鼻腔内に血液が固まり、粘膜のはれも生じて鼻腔が狭くなり、
鼻閉(びへい)を生じます。
 検査と診断 |
症状によって診断は容易ですが、検査として次のものがあります。
(1)鼻の単純X線撮影(ウォーターズ法、鼻骨軸位、鼻骨側面像など)撮影法は病院で決定します。
(2)CT単純X線より細かく正確に診断できます(
図21・左下)。
(3)3D‐CT(3次元CT)頭蓋骨を立体的にみられるので、患者さんにもわかりやすい画像です。
 治療の方法 |
できるだけ早期にアッシェ鉗子(かんし)やワルシャム鉗子(鼻腔に入れて鼻骨骨折部を持ち上げるための器具)を用いて、変形した鼻骨を整復します(外来で局所麻酔下に実施します)。多くは整復されたとたんにギクッという音がします。術後は鼻腔内にタンポンを入れ、外側からはスプリント(金属板などを鼻の形にして鼻の上からかぶせ、再変形を防ぐ)やテープで約1週間固定します。
受傷後1カ月以上たったものでは局所麻酔で整復固定は困難で、全身麻酔下で骨切り術をして骨組みをつくり直します。それには形成外科を受診します。
 応急処置はどうするか |
鼻出血が強い時は鼻腔内にガーゼや綿を入れて止血し、患部を冷やして形成外科か耳鼻科を受診します。受傷後早ければ早いほど整復しやすくなります。