 症状の現れ方 |
動悸(どうき)、暑がり、体重の減少などの
甲状腺機能亢進症の症状が、比較的短期間に認められるようになり、受診する例が多いようです。甲状腺機能亢進症の5~10%くらいが無痛性甲状腺炎です。
症状が比較的軽度であること、病気で悩む期間が短いこと、
眼球突出などの眼症状はないことなどが
バセドウ病との違いですが、紛らわしいのでしばしば誤診されていました。しかし、バセドウ病では治療しないと甲状腺ホルモンは低下しないのに対して、無痛性甲状腺炎の
甲状腺機能亢進症は一過性で、治療しなくても正常化するので、治療法はまったく異なり、両者の区別は重要です。
 検査と診断 |
バセドウ病ではTSHレセプター抗体が陽性になるので、
甲状腺機能亢進症であってTSHレセプター抗体が陰性であれば、無痛性甲状腺炎の可能性が大きくなります。
しかし、時に無痛性甲状腺炎でもTSHレセプター抗体が一時的に陽性になることがあり、その時は
バセドウ病との区別が難しいので、放射性ヨード摂取率の検査をすることがあります。この検査は1週間ほど海草類をとらないようにしてヨード制限をしてから、放射性ヨードを入れたカプセルを内服し、6時間あるいは24時間後に甲状腺に取り込まれた放射性ヨードの放射を測定する検査です。
バセドウ病では放射性ヨード摂取率は高値になるのに対して、無痛性甲状腺炎では極めて低値になるので見分けることができます。ただし、この検査はどの施設でもできるものではないので、自覚症状が強くない時は、無痛性甲状腺炎と考えて治療をしないで経過をみることもあります。
無痛性甲状腺炎であれば、最初は甲状腺組織の破壊のために、濾胞(ろほう)に蓄えられた甲状腺ホルモンが血液中にもれ出てきて、甲状腺ホルモンが高くなります。
しかし、
バセドウ病と違ってホルモンが過剰につくられているわけではないので、1~2カ月すると甲状腺ホルモンは低下してきて、反対に
甲状腺機能低下症になります。甲状腺機能低下症は2~3カ月でおさまり、通常はもとの正常な甲状腺機能にもどります。ただし、20%くらいの症例では、そのまま永続的な甲状腺機能低下症になるので、最後まできちんと経過をみることが重要です。