 検査と診断 |
診断には、顕微鏡で鼓膜(こまく)をよく観察することが大切です。鼓膜は半透明ですから、その裏側にある腫瘍が透けて見えて診断されたり、大きな腫瘍では鼓膜を押し出すように発育してはっきり見えることもあります。
腫瘍が耳小骨(じしょうこつ)(耳のなかにある音を伝える骨)に接している場合には
難聴を自覚し、聴力検査で伝音難聴(でんおんなんちょう)がみられます。アブミ骨筋反射、鼓膜の動きを測るティンパノメトリーも参考になります。側頭骨ターゲットCTで腫瘍の大きさ、部位、周囲の骨や神経との関係を判断します。
中耳腫瘍は小さな腫瘍ですが、最近はMRI検査で非常に小さなできものを映し出すことが可能になり、腫瘍の性質が判断できます。以下に代表的な腫瘍について説明します。
(1)顔面神経鞘腫(がんめんしんけいしょうしゅ)顔面神経は、脳から耳の骨のなかを通過して顔の筋肉へ達します。神経の腫瘍ができる場合には中耳を通過する部分にできることが多く、
難聴が初発症状の場合があります。進行すると顔面の動きが悪くなる
顔面神経麻痺が起こります。
(2)グロームス腫瘍(しゅよう)、血管腫(けっかんしゅ)血管の音が聞こえる拍動性
耳鳴りは、ほとんどの場合は頸動脈の音が聞こえているだけで心配はありません。
しかし、ごくたまにグロームス腫瘍や血管腫による症状の可能性があり、注意が必要です。大きくなると鼓膜の内側に赤褐色のできものが見えることもあります。非常に血液の流れが多い腫瘍で、手術は慎重に行われます。
その他の良性腫瘍には、カルチノイド腫瘍、腺腫(せんしゅ)などがあります。非常にまれですが、中耳にもがんができることがあり、ほとんどが扁平上皮(へんぺいじょうひ)がんです。中耳腫瘍と区別が難しい非腫瘍性の病気として、コレステリン肉芽腫(にくげしゅ)、真珠腫(しんじゅしゅ)、鼓室硬化症(こしつこうかしょう)、高位頸静脈、頸動脈の走行異常などがあります。