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薬をめぐるトピックス お薬検索[薬事典]- メディカルiタウン


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お薬検索[薬事典]

薬をめぐるトピックス

ニボルマブ(オプジーボ)の薬価引き下げの件

今年(2017年)2月、悪性黒色腫・非小細胞肺がんの治療薬であるニボルマブ(商品名:オプジーボ)の薬価が10mL1瓶(100mg)729,849円から364,925円に引き下げられました。薬価は通常2年に1度改定されているので、通常ならば2018年4月がその時期ですから、今回は異例と言うべきものでした。

2014年9月に悪性黒色腫を適応として、類似薬がない状況で患者数の少ない適応でもあったため、上記の金額で薬価収載されたオプジーボですが、2015年12月に非小細胞肺がんへの適応も認められました。まだイギリスのようなルール(適応が拡大された際には政府機関であるNICE:National Institute for Health and Care Excellenceが関与して、費用対効果などの観点から改めて価格が決まる)がなかったため、薬価が変更されることはなく、2016年4月の薬価改定期を迎えました。

この時点で新たな適応で使用される量を把握し、それに基づいて薬価を改定するルールができていればよかったのですが(当然、国の仕事です)、残念ながら今回も泥縄式の対応となりました。

今回、オプジーボの価格は、日本が約73万円に対し、米国で約30万円、英国では約15万円であり、「日本が一番高い」は事実だったのですが、昨年のトピックスで話題にしたC型肝炎治療薬のソホスブビル(商品名:ソバルディ)では日本が一番安かったことなどなかったような報道には少々首を傾げました。

法治国家なのですから、先にルールが示されてあるべきでしょう。

「ハーボニー偽薬(にせぐすり)事件」

この1年、薬剤師としてとても残念な事件が二つありました。

一つは、あえて言えば薬剤師の存在意義を根底から覆す事件、全国的にも大きく報道されたC型慢性肝炎の治療薬であるレジパスビル・ソホスブビル配合錠(商品名:ハーボニー配合錠)の偽薬事件です。

「製薬メーカー→薬品問屋→薬局・病院など医療機関」へと流れる正規の流通経路だけならば、当然ですが偽薬が入り込む余地はありません。しかし以前から、現金問屋と呼ばれる非正規の流通経路は存在していました。非正規といっても国の免許(医薬品卸売業)が必要ですので、当然その組織には管理薬剤師が存在します。また、その流通を受ける側の薬局にも当然、管理薬剤師がいます。今回の事件は、そのどちらの管理薬剤師も歯止めにはならなかったということで、同じ薬剤師としてとても残念に、また腹立たしく思っています。

そもそも医薬分業の歴史的な成り立ちは、毒殺が横行した中世ヨーロッパで患者たる王様に危難が及ばぬよう、処方する医師と調剤する薬剤師を分離し、相互監視ができるようにして安全性を担保するものでした。具体的には、医師と薬剤師の人的・物理的分離、医師が薬局を所有することの禁止です。ここで、薬局・薬剤師側の当然の義務として確かな品質の医薬品を提供することが求められます。提供すべき医薬品の品質を定めた「薬局方」は、法律で定められた規格基準書です。

医薬品の流通には免許(医薬品製造業、医薬品卸売業、医薬品小売業)が必要です。例えば、医薬品を個人輸入することはできても、その薬を他の人に譲ることは法律で禁止されている行為です。業務を独占しているわけですから、義務と責任をしっかり果たしてもらわなければなりません。

「クオール事件」

もう一つの事件は、制度の問題です。大手薬局チェーンであるクオールが経営する薬局で、調剤された一部の保険請求が、調剤した店舗ではなく他の店舗からの請求として扱われていた件です。

こちらの問題を理解するには、調剤行為に対する保険上の点数(価格)が、各薬局の条件により異なるということを知らなければなりません。

日本全国どこで調剤を受けようと、薬品の価格は全て同じです(公定薬価)。しかし、薬局の手数料にあたる部分については条件により異なってきます。時間帯によって(開店前とか午後7時以降とか)、あるいは休業日に調剤した場合などは時間外の加算がつきますので、同じ薬局でも割高になります。時間外についてはまだ理解しやすいと思いますが、2種類ある後発医薬品体制加算や、10段階にも分かれた基本調剤料などでは、制度とはいえ、また薬局側は患者さんに対して説明する立場であるわけですが、説明するのが難しい問題です。高齢社会となって保険医療の財源が厳しくなっていることもあり、2年ごとにこれらの制度が変更されるため、どんどん複雑になっている印象です。以下、少し詳しく見ます。

「基本調剤料」は、病医院を受診した際の初診料・再診料にあたるものです。こちらは、規模(店舗の大きさではなく、保険調剤を月に何回受けつけたかで決まる)と特定の病医院からの処方箋がどのくらいあるかの集中率、そして薬価が2年ごとに改定されるため仕入れ価格もそのたびに価格交渉で決まるのですが、その価格交渉の改定後半年以内の妥結率が50%を超えているかどうか、など様々な要因がからんできます。

「後発医薬品調剤体制加算」は、その薬局が受けつけた処方箋に処方されていた薬で後発医薬品が存在するもののうち、一定割合以上が後発医薬品で調剤されている薬局に対して認められるものです。現在は65%以上と75%以上の2段階があり、後発品の調剤割合が65%未満の薬局には認められない加算です。これは、その条件を満たした薬局に認められた加算ですので、ある患者さんが後発医薬品を望まず、先発医薬品しか受け取らなくても、また、そもそも処方された薬に後発医薬品が存在しない場合でも、後発医薬品調剤体制加算として算定されてしまいます。

そのほかに、備蓄医薬品の種類が1200以上とか、かかりつけ薬剤師の届出がされているなどの条件をクリアした薬局には、さらに施設基準としての加算(基準調剤加算)が加わります。

このため、同じ処方箋を調剤してもらっても、薬局ごとに自己負担金の額が異なってきてしまうため、患者さんの側から見ると、保険医療という公定価格の世界なのに同じものの値段が異なるということになってしまっています。

いずれにせよ、それぞれの薬局の条件に応じた基本点数が決まっているので、その条件を変更できれば基本点数を高く設定できることになります。筆者のように一店舗のみの経営であれば考えもつかないことが、多くの薬局を経営していると経済的・経営的な観点からできてしまうのです。もちろん、このことは詐欺、それも組織的な詐欺にあたります。

薬剤師と倫理性

どちらの事件も、利益を追求する営利企業が運営できる薬局という業態が内包していた問題が顕在化したと言ってもよいでしょう。管理薬剤師には薬局管理上問題があった場合、開設者に改善するよう意見を具申することが求められます。しかも、その行為により行政処分の対象になるなど責任の取り方が明らかにされています。一方、薬局開設者は自身が薬剤師・保険薬剤師でなければ、詐欺罪などで立件でもされなければ痛くも痒くもないでしょう。新たな管理薬剤師を雇用すれば、あるいは場合によっては新たな薬局を開設すれば済んでしまうからです。

経営者に対して弱い立場にある現代日本の労働者(管理薬剤師)が、経営者の方針(利益の追求)に対して職を賭して異を唱えることは、なかなか難しいことが想像できます。それよりもドイツなどのように、薬局開設者を薬剤師に限定するなど、責任の所在を明らかにして、違反した薬局は開設者・管理者ともども退場を願うといったような仕組みが必要と思います。

「Ethical drug」という言葉があります。直訳すれば「倫理的な薬」ですが、医療用医薬品(処方薬)を指すときに使われます。消費者(支払者)が決定権を持たない医療用医薬品という特殊な商品を消費者の手に正しく届けるには、処方する医師、調剤する薬剤師に当然のことながら高い倫理性が求められます。そんな意味が込められた言葉です。それを扱う職業の意味を問い直す必要があります。

制度としての処方制限

今年(2017年)3月、ベンゾジアゼピン系薬品や非ベンゾジアゼピン系薬品を含む催眠鎮静薬、抗不安薬、抗てんかん薬として使用される44成分の医薬品について、使用上の注意が改訂されました。

重要な基本的注意に「連用により薬物依存を生じることがあるので、漫然とした継続投与による長期使用を避けること。本剤の投与を継続する場合には、治療上の必要性を十分に検討すること」という文章が加えられたのです。

本書では、精神神経科の薬の章で「ベンゾジアゼピンの最大の欠点は「依存症」です。外国ではこの依存症は医師がつくっているといわれるくらいで……」と書いてきましたが、それに対応してイギリスでは以前よりベンゾジアゼピン系薬品に対しては短期間(4週間以内)の使用を、またアメリカのFDA(食品医薬品局)はゾルピデム酒石酸塩(日本での商品名:マイスリーなど)については2週間の使用に限る、といったように使用制限をつけていました。今回の厚生労働省による注意の改訂は、そこまで踏み込んではいませんが、一歩前進と言えるでしょう。

数年前の診療報酬改定で、向精神薬(睡眠薬や精神安定薬)の処方できる種類の数に制限がかかったり、昨年の診療報酬改定で、湿布薬の1回に処方できる数量が制限された結果、これらの薬剤が処方される量は明らかに減少しています。処方する医師の意識改革にはなると思います。

同様のケースとは言えないかも知れませんが、抗生物質・抗菌薬の使用に関しても動きが出ています。

2015年のWHO(世界保健機関)の総会で、薬剤耐性菌の問題に対して各国がアクションプランを作成することが求められ、日本も2016年にプランを決定し、2017年3月には「抗微生物薬適正使用の手引き」が公開されました。この手引きでは「不必要使用(ウイルスが原因の風邪など抗菌薬が必要ない状況にもかかわらず処方される)」や「不適切使用(抗菌薬の種類・量・期間が不適切)」などのケースを示しています。

ウイルスが原因の風邪に抗生物質が無意味なことは医療関係者では常識であるにもかかわらず、わが国ではいまだに「念のため処方される」抗生物質は数多いと思われます。このことは本来、処方する医師の問題であるべき事柄なのですが、向精神薬や湿布薬と同様、医療保険のレセプト審査において、不必要・不適切な抗菌薬処方をチェックできる体制がとられる可能性について厚生労働大臣が言及したとの報道がありました。専門医の学術大会での祝辞の中での話です。少々情けない話ではありますが、こちらは国際公約でもあり、実施されるでしょう。

セルフメディケーション税制

さて、最後も薬とお金にまつわる事柄なのですが、こちらは国が負担する医療費(保険医療費)の減少に寄与すると考えられる、自分でOTC医薬品を購入する人(セルフメディケーションの実施者)を税金面で優遇しようという制度です。

ただし、単にOTC医薬品を購入するだけでは控除を受けることはできませんので注意が必要です。具体的には、下記のような定期健康診断などを受けている人が、医療用から転用された特定成分を含むOTC医薬品を購入する場合が対象となります。

  • ①特定健康診査(いわゆるメタボ健診)
  • ②予防接種
  • ③定期健康診断(事業主健診)
  • ④健康診査
  • ⑤がん検診

この対象者が2017年1月以降に、対象となる薬を年間12,000円を超えて購入した際に、12,000円を超えた部分の金額(上限金額:88,000円)について所得控除を受けることができるものです。

以前からある医療費控除(医療費関連支出、年間10万円以上が対象)と重なる部分があるので、どちらか一方を選択する制度ですが、薬のレシートはしっかり保存しておくようにしましょう。

本文は、「医者からもらった薬がわかる本 第30版(2017年8月改訂デジタル専用版)」の記事を原文のまま掲載しています。

[処方薬]は、株式会社 法研から当社が許諾を得て使用している「医者からもらった薬がわかる本 第30版(2017年8月改訂デジタル専用版)」の情報です。掲載情報の著作権は、すべて株式会社 法研に帰属します。

データ更新日:2017/08/09

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