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薬をめぐるトピックス お薬検索[薬事典]- メディカルiタウン


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お薬検索[薬事典]

薬をめぐるトピックス

薬とお金(1)高額の薬

2015年9月、インターナショナルニューヨークタイムズ紙に「ある薬の値段が13.5ドルから750ドルに跳ね上がった」とセンセーショナルな見出しの記事が掲載されました。

チューリング・ファーマシューティカルズ社が権利を買い取った、60年以上前に開発された抗菌薬の一種「ダラプリム」を55倍に値上げする、としたものです。ダラプリム(一般名:ピリメサミン)は日本では未承認の薬ですが、医療上の必要性の高い「未承認薬・適応外薬検討会議」に現在「トキソプラズマ脳炎を含む重症トキソプラズマ症の治療および再発予防薬」として要望が出されているものです。

さすがのアメリカでもこのニュースは大反響を呼び、同社のCEOは「アメリカで最も嫌われる人物」と呼ばれるなどバッシングを受け、値下げの表明もしたようですが、実際にいくらになったのかの報道を筆者はまだ目にしていません。

現在の日本では、保険医療で使用する薬品の価格は公定価格で、製薬メーカーが勝手に値段をつけることはできませんので、ありえない話と捉えられる方も多いかとは思いますが、アメリカでは医薬品の価格は製薬メーカーが価格決定権をもっています。例えば、日本でも利尿薬としてよく処方されるラシックス錠40mgですが、その1錠の価格は、日本では2002年に19.5円、2016年に14円に対し、アメリカでは2005年に39セント、2016年に94セントです。

日本では2年ごとの薬価改定で徐々に値段が下がる傾向が強いのに対し、アメリカではさまざまなコスト要因を加味して製薬メーカーが価格改定を行っています。なかには競合相手の製造権を買い取り、合法的に独占販売会社となるケースもあり、最近では冒頭の55倍ほどではなくても数倍から10数倍に上昇しているものが少なくありません。

そんななか、ギリアド・サイエンシズ社からC型肝炎の治療薬、ソバルディ錠、ハーボニー配合錠が発売されました(日本ではともに2015年)。世界各国で発売され、価格は国により異なっていますが、日本ではソバルディが1錠61,799円、ハーボニーが1錠80,171円でした。とても高いと感じる方がほとんどでしょうが、肝炎が肝硬変・肝臓がんに進行するのをストップできるので、トータルで考えた場合、医療費としてはより少なくなると考えられています。

このソバルディの値段、実はこの値段でも英米独と比べると日本が一番安いのです。アメリカは1錠1,000ドル(約11.2万円)、イギリスは416ポンド(約6.7万円)、ドイツは714ユーロ(約9万円)です(2016年3月30日の為替レートで計算)。

しかも、日本の薬価制度では、予想よりも売れすぎた医薬品の薬価を引き下げる「市場拡大再算定」制度があります(この制度のため、前回の薬価改定で神経因性疼痛の治療薬リリカ錠75mgは167円から125円に引き下げられました)。2016年4月の薬価改定でソバルディもその対象となり、42,239円に下がりましたから、アメリカの3分の1の値段ということになります。

この新薬価が公表された同じ週に、政府はTPP(環太平洋パートナーシップ)協定および整備法案について閣議決定し、国会に提出しています。

そのTPP協定にはISDS(投資家と国との紛争解決)条項があります。今のところ、むやみに訴えられないような規定があるとのことなので、アメリカの企業であるギリアド社から、日本で逸したアメリカでの販売価格との差額を請求される心配は少ないようですが、将来的には心配の種を宿しているように思えます。

薬とお金(2)ノーベル賞と薬

2015年のノーベル医学・生理学賞が北里大学特別栄誉教授の大村 智(さとし)博士に授与されました。連日ニュースが流れ、見聞きされた方も多いと思いますが、博士の見出した放線菌から開発されたイベルメクチンは、当初、動物の寄生虫用医薬品として発売され、後にアフリカの風土病であるオンコセルカ症(河川盲目症)の治療・予防に効果があることが判明しました。この時点でオンコセルカ症は、全世界の失明原因の第2位で、治療薬が求められていましたが、患者の大半は発展途上国の貧しい人たちでした。

このとき、さまざまな経緯はあったのですが、開発メーカーのメルク社はヒトでの臨床試験を行い、1988年からアフリカなどオンコセルカ症が蔓延(まん えん)している国々にイベルメクチンを無償で提供するプロジェクトを始めました(この際、大村智博士はヒト用イベルメクチンに関する特許権を放棄しています)。

イベルメクチンは、オンコセルカ症の原因である回虫の一種、回旋糸状虫の成虫を死滅させることはできませんが、成虫が生み出すミクロフィラリアと呼ばれる幼虫(1匹の成虫は長ければ15年生き、1日に1,000のミクロフィラリアを生み出すといわれています)を劇的に減少させることができます。イベルメクチンを年に1~2回使用することで病気の発生と進行を抑えることができるので、患者は失明の恐怖に怯えなくてもすむようになりました。

ちなみにイベルメクチンは、日本では商品名ストロメクトール、薬価は3mg1錠772.60円、腸管糞線虫症および疥癬(かい せん)の薬として販売されています。海外ではオンコセルカ症治療のための無償提供用はMECTIZAN、それ以外はSTROMECTOLの名称で使用されています。価格はアメリカでは4錠で25ドル(販売する薬局によりクーポン等の利用で10数ドル程度になることが多い)、フランスでは4錠18.72ユーロとなっており、こちらは日本が一番高価です。なお、イギリス、ドイツでは未承認です。

薬とお金(3)「途上国の薬局」

インドの医薬品特許は、以前は昔の日本と同じく製法特許(医薬品の成分の化合物そのものに特許を認めず、異なる製造方法ならば同じ化合物を製造することができる)でした。つまり、新薬を開発した製薬メーカーが物質特許を有する国では独占販売できる期間であっても、インドではジェネリック医薬品が製造できたのです。

もちろん、インドで製造されたそのジェネリック医薬品は物質特許の国への輸出はできませんが、発展途上国の多くは医薬品の物質特許を認めていませんので、インドは「途上国の薬局」と呼ばれるようになりました。

2002年にインドでも物質特許が認められるようになりましたが、公衆衛生上の観点から、政府が的確な企業に特許医薬品を生産できるように強制実施権を与えることを認めています。

そのためか前述したソバルディについても、ギリアド社がインドの数社の製薬メーカーにライセンス生産を認め、1錠10ドル以下、地方によっては5ドル以下で発売されています。このことは、ある意味、国際間の所得の再分配になるとも言えますし、メルク社のようにイベルメクチンを無償で供与できるケースはごく少ないと考えるのが普通ですから、持続可能な社会貢献のモデルとみることもできます。

また、日本の場合、C型肝炎の治療は大半が公費負担で賄われます。患者さんは月に1~2万円の負担でソバルディやハーボニーの治療が受けられますので、インドへ行って治療を受けようという選択はないかもしれませんが、1錠1,000ドルもするアメリカでは治療ツアーなどが企画されるのではないでしょうか。

かかりつけ薬局、かかりつけ薬剤師

さて、2016年4月、2年おきの保険医療の公定価格を定める改定が行われました。そのなかで、「かかりつけ薬局」「かかりつけ薬剤師」という言葉が目につきます。かかりつけ薬局・かかりつけ薬剤師と改めて言われても、いったいどんなものでしょうか?

普通の感覚では、「かかりつけ薬局」と書けば、行きつけの薬局。「かかりつけ薬剤師」と書けば、普段から相談に乗ってくれる薬剤師。言葉のイメージとしてはこれで十分です。もう少し具体例をあげてみれば、処方薬はもちろん、OTC医薬品(一般用医薬品)やサプリメントについても気軽に相談できる、なじみの薬剤師がいる薬局といったところでしょうか。

しかし、このことをフィー(調剤報酬)に絡ませるといろいろ問題点が出てきます。フィーの対象を厳密に定義しなければならないからです。

かかりつけ薬剤師になるためには、次のような条件が決められています。

  • 薬剤師として3年以上の薬局での勤務経験
  • 現に勤務している薬局に6カ月以上在籍している
  • 同一の保険薬局に週32時間以上勤務している
  • 研修認定薬剤師である
  • 過去1年以内に医療に関する地域活動の取り組みに参画している

以上をクリアしている「かかりつけ薬剤師」が在籍する薬局において、患者さんがその薬剤師を自分の「かかりつけ薬剤師」であるという同意書を書いた場合に、次回の調剤より「かかりつけ薬剤師指導料」「かかりつけ薬剤師包括管理料」がフィーとして算定されます。ただし、その薬局に複数の薬剤師が在籍している場合、かかりつけ薬剤師以外の保険薬剤師が服薬指導などを行ってもこのフィーは発生しません。患者1人につき、かかりつけ薬剤師は1人のみとなります。

かかりつけ薬剤師が行うべき業務は、現に調剤した医薬品の服薬指導は当然ですが、患者さんが受診しているすべての医療機関を把握して、服用しているすべての処方薬(他の医療機関で投薬されたものも含む)、OTC医薬品、健康食品などにも対応することが求められます。

そんな「かかりつけ薬剤師」がいる薬局が「かかりつけ薬局」なのですが、それでは「薬局」とはどう定義されているでしょう。  薬局の大きさは、その最低基準が「薬局等構造設備規則」という厚生労働省令の中に定められています。広さに関する部分を要約すると「面積はおおむね19.8平方メートル以上とし、中に6.6平方メートル以上の調剤室を有すること」とあります。

昔風に言えば、6坪の店舗の中に2坪の調剤室があれば薬局としての最低基準は満たしていることになります。元となる厚生省令が昭和36年に定められたもので、当時はそれだけあれば、薬局が扱うアイテムはほぼ取り揃えることができたということですが、今、厚生労働省が思い描くかかりつけ薬局像(健康サポート薬局)の要件を満たすには、いかにも小さいと言えます。

具体的には、個人情報に配慮した相談スペースの確保としてパーテーションなどで区切られた相談窓口の設置であったり、OTC医薬品、衛生材料、介護用品などを利用者自らが適切に選択できるような供給体制が求められるほか、開局時間であったり、電話などでの24時間対応、地域での医療・介護への連携などが必要とされています。

現在、5万7千軒以上ある薬局のうちどれだけがこの条件をクリアしているでしょう?

お薬手帳は何のため?

今回(2016年)の健康保険の報酬改定で変わったことの一つに、お薬手帳が関連する「薬剤服用歴管理指導料」があります。

今までは、お薬手帳を持参する自分自身の健康に意識の高い人のほうが、持参しない人より負担金が高くなるという妙な仕組みでした。これは調剤報酬の仕組みが、目に見える形で行った行為に対するフィーという性質が強かったため、お薬手帳に記入・貼付する行為に対してフィーが発生し、持参すると41点、持参しないと32点と、持参しないほうが3割負担で30円安くなるなどと、実際には患者さんの安全を脅かす行為を誘導していたと言われても仕方がないような体系でした。

それが今回の改定で自分自身の服薬履歴など、しっかり管理している意識の高い人を優遇するという理にかなった規定となりました(薬剤服用歴管理指導料が、お薬手帳を持参した場合38点、持参しなかった場合50点となります)。

ただし、この意識の高い人を優遇する制度もすべての薬局で実施されるのではない、ということも知っておく必要があります。今回、かかりつけ薬局・かかりつけ薬剤師という概念を大きく打ち出したなかで、かかりつけ薬局とそうでない薬局との線引きを、薬局の規模であったり、薬剤師の状況(経験、認定資格の有無、当該薬局での勤務状況、有資格者の割合など)で判断し、6段階の調剤基本料(41点~15点)が設定されました。そのなかで調剤基本点数41点の薬局のみで実施される制度なのです。そして、該当する薬局に過去6カ月以内に調剤してもらった場合にのみ、この優遇策が適用され、それ以外のケースはお薬手帳を持参してもしなくても50点が算定されます。

もっとも患者さんの負担金額は、基本点数と薬剤管理指導点数だけで決まるものではありません。結果として同じ薬を同じ数受け取る場合でも、前項のかかりつけ薬剤師を選定した患者さんのケースでは、かかりつけ薬剤師から投薬を受ける場合とそれ以外の薬剤師から受ける場合で違ってきます。

調剤報酬点数が複雑な仕組みになってしまったためですが、疑問に感じたことはその場で担当の薬剤師に聞いていただくのが一番です。薬局店頭には調剤報酬点数表をよく目につく場所に掲示することが義務づけられましたし、薬剤師には問い合わせには答える義務が生じますので。

本文は、「医者からもらった薬がわかる本 第30版」の記事を原文のまま掲載しています。

[処方薬]は、株式会社 法研から当社が許諾を得て使用している「医者からもらった薬がわかる本 第30版(2017年2月改訂デジタル専用版)」の情報です。掲載情報の著作権は、すべて株式会社 法研に帰属します。

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