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「てんかん」を知っていますか? - 治療と経過、日常生活 病気を知ろう 医療特集 - メディカルiタウン


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医療特集

「てんかん」を知っていますか? - 治療と経過、日常生活

更新日:2016/08/01

てんかんの治療と経過、日常生活で注意すべきことや社会資源の活用について伺いました。

NTT東日本関東病院 脳神経外科・てんかんセンター 医長 松尾 健

お話を伺った先生:

てんかんの治療と経過

てんかんの治療は発作を防ぐことが目的です。脳波異常は残っていても発作が抑えられてさえいれば、てんかんを意識しないで日常生活を送ることができます。

治療の中心は薬物療法です。てんかん患者の6~7割は薬物療法のみで発作を起こさない状態を維持することができるため、自分に合った適切な薬を早期に見つけることが重要です。

「病気そのもので命を落とすことはほとんどないと言っても、早期に治療を開始することが大切です。特に乳幼児期の場合には、脳波異常や頻回の発作があると、精神発達にも影響することがあります」(松尾先生)

早期に治療を始めれば、成長に遅れをきたさないか、きたしたとしても最小限でとどめられます。少し大きくなった子どもや成人でも、海馬に異常があって発作を繰り返せば、記憶や認知能力に影響を与えかねないので、早めに発作を止める必要があるのです。

薬物療法

「特発性」「症候性」、「部分(焦点性)」「全般」、という4分類に応じて、副作用が少なく有効性がある程度高いとされる第1選択薬があります。まず、それを単剤で服用してみて、発作防止効果が不十分であれば第2選択薬、第3選択薬への変更や、いくつかの薬を組み合わせて発作の消失を目指します。

「治療の目標は発作の消失ですが、発作が完全に消えなくても、頻度が減って満足できれば、それで治療効果があると判断していいと思います」(松尾先生)

てんかんと診断されても、必ずしも生涯服薬し続けるわけではありません。特に子どもの「良性」てんかんは、思春期・成人になる頃までに発作が消えるものも多くあります。そういう人の場合、てんかんがあっても薬を使わずに様子を見ることもあれば、少量の薬を成人するぐらいまで続けるということもあります。

服薬の中止、量の調節

薬を使って2年間発作を抑制できた人の場合、薬をやめたり、減らしたりすることを考慮してもよいとされています。もっとも、てんかんのタイプによっては、薬をやめた後に高率に再発するとされているものもあり、その場合は慎重にならざるを得ません。

薬をやめた後に再発してしまう場合、約9割の人が1年以内に再発すると言われています。再発は寝不足やストレスがきっかけとなることもありますが、確たる理由もなく再発することもあります。再発した場合はそこからまた服薬を再開しますが、服薬中止前の薬が効かなくなってしまうケースもあります。

服薬中の人が、発作を起こした場合に追加で飲むための薬を常備するというケースもあります。また、患者の発作や生活のパターンに合わせて、例えば月末は多忙だからと、許容範囲内で薬を増量することがあります。

薬をやめて2年以上発作がないなら通院は不要ですし、薬を飲み続けている人も、何も変化がなく発作が治まっていれば、脳波を定期的にとる必要はありません。

薬の副作用について

薬の効き目にも副作用にも個人差があります。多くの薬が肝臓で代謝されるので、肝臓には一定の負担がかかるほか、眠気や認知力の低下といった、薬ごとの副作用があります。一部の薬は腎臓から排泄されるので、腎臓の機能低下がある人は注意が必要です。最近続々と新規の抗てんかん薬が登場しています。特に難治性てんかんに対しては、選択肢が増え、既存の薬と組み合わせることでこれまで以上の効果が期待できます。眠気や倦怠感などの日常生活に支障をきたす副作用も抑えられており、新薬の登場は特に学生や社会人に喜ばれています。

【関連】抗てんかん薬の副作用(病気事典コラム)を読む

服薬時の注意

しばらく発作が治まっていた人が発作を起こして運ばれてくる場合、一番多いのは薬の飲み忘れです。

「調子がいいからと油断して、数日飲んでいなかったというのがよくあるケースです。薬にはそれぞれ有効な血中濃度があって、それを維持しなくてはなりません。飲み忘れて1~2時間で気づいたならそこで飲んでも構いませんが、朝飲み忘れたからといって夜に倍の量を飲むことは、副作用のリスクが高まるので決してしないでください。次回の分からきちんと服薬を再開してください」(松尾先生)

薬の効果に疑問があるとき

多くの新薬が登場していると紹介しましたが、残念ながら全ての医師がてんかんの薬に精通しているとは言えません。きちんと服薬していても発作が止まらない場合は、薬があっていないということも考えられます。

「もし、発作が止まらない状態で、そのまま同じ薬を延々と出されているような場合には、てんかんを専門的に診ている、当院のような施設を受診してみることをおすすめします。たとえ、その専門施設が遠方でも、一時的に通院して最適な薬を選択してもらい、発作が治まれば、また地元の病院に戻って治療を続けることができます」と、松尾先生は助言します。

外科治療

適切と考えられる薬を適量使用しても発作が抑え切れない、いわゆる難治性てんかんと言われる人の場合、外科治療を検討することがあります。手術は基本的に開頭で行い、脳の過剰な興奮が起きる部位(焦点)を切り取る焦点切除術、脳の異常な興奮が拡散する経路を遮断する遮断手術などがあります。部分てんかんであれば、根治が期待できるケースもあります。妊娠・出産したいが薬による催奇形性(さいきけいせい)が怖いなど、薬物療法をやめたい方が手術による治療を望むケースもあります。

「転倒発作」という、突然バタンと倒れるような発作を起こすタイプのてんかんでは、転倒による外傷のリスクが高まります。こういった人は左脳と右脳の興奮の同期性が強いので、同期性を遮断する脳梁離断術(のうりょうりだんじゅつ)という手術を行います。これによって、発作を全てなくすことはできなくても、突然倒れるような危険な発作を消すことができたり、発作頻度が下がったりするため、緩和的手術と呼ばれています。

迷走神経刺激療法

2010年から、首の部分で迷走神経に電気刺激を与えることで発作を減らす「迷走神経刺激療法」という治療が新たに保険適用になりました。脳への直接的な操作を行わないので、身体的負担は少ないと考えられます。脳梁離断術と同じく緩和的手術に分類され、約60%の人で発作が半分以下になると言われています。脳への直接的な手術ができない人や、開頭手術を受けたけれども発作が残ってしまった場合には迷走神経刺激療法が考慮されることになります。てんかん学会で認定された脳神経外科医しか手術できないため、専門施設を受診する必要があります。

日常生活の注意点

発作に居合わせたら

発作には、呼びかけても何の返答もないような完全に意識がない状態と、返事はするが行動が伴わない意識減損という2種類の状態があります。本人の意識がどれだけしっかりしているかは、発作の種類によります。いずれの場合でも、周りの人が配慮すべきなのは、本人を周囲の危険から遠ざけてあげることです。

例えば、主婦であれば家事の最中に発作が起きるかもしれませんが、包丁や火を遠ざけないと危険です。また、電車のホームで発作を起こした人の場合は、転落しないようホームの端から真ん中の方に寄せてあげるようにします。

救急車を呼ぶ目安は「5分間」

てんかん発作を起こしたとはっきり分かっている場合は、安全を確保したうえで、そっと見守ってあげるのがいいでしょう。基本的に、ほとんどの発作は5分以内に治まります。

「5分で治まらない場合は、薬を使わないと止まらないことの方が多いので、救急車を呼んだ方がいいでしょう。また、全く知らない人が発作を起こした場合には、何の発作かも分かりませんから、すぐに救急車を呼んでください」(松尾先生)

「ハンカチを噛ませる」は誤り

かつては、けいれんしていると「舌を噛まないようにハンカチを噛ませる」といったことが言われていましたが、松尾先生は「それは間違いなので絶対にやらないでください。それで救えた命よりも、窒息するなどして失われた命の方が多いはずです」と注意を喚起します。

日常生活における制限

てんかんは、薬でうまく発作を抑えられれば日常生活が制限されるようなことはほとんどありません。発作の程度や頻度にもよりますが、多くの人は普通に日常生活を送り、働いています。ある程度障害が重い人は、企業の障害者雇用枠で雇用される場合もあります。

妊娠・出産時の注意

てんかんの人が妊娠・出産を望む場合は、必ず事前に医師に相談してください。薬によっては催奇形性があるため、注意が必要です。妊娠に備えて、あらかじめ薬を調整したり、変更してもらうことができます。また、抗てんかん薬には体内の葉酸(ようさん:ビタミンの一種)を減少させるものもあり、葉酸の不足も奇形の発生率が上がるリスクになります。てんかんの人の妊娠に際しては、妊娠前から継続的に葉酸を補充することが推奨されています。

車の運転

かつて、てんかんの人は車の運転が禁止されていたにもかかわらず、これを守らずに事故を起こすといった状況がありました。2002年に道路交通法が改正され「過去に5年以上発作がなく、今後発作の起こるおそれがない」「発作が過去2年以内に起こったことがなく、今後X年であれば発作が起こるおそれがない」(X年は主治医が記載)といった該当要件を満たした主治医の診断書もしくは臨時適性検査に基づいて、運転免許証の交付が許可されるようになりました。

「もっとも、5年ぶりに発作が起こるということもあり得るので、運転しないで済むならできる限りはしないことをおすすめします」と、松尾先生は助言します。

質問票に対する申告で虚偽があり、重大な事故を引き起こしてしまった場合には、罰則(懲役 1 年以下、罰金 30 万円以下)が適用されることもあります。

社会資源の活用

障害年金

てんかん患者は、その程度によって本人や家族が支援を受けられる場合があります。

重度のてんかんの場合は、障害者認定を受けられれば障害年金を受け取れます。初診日から1年半以上経過していて、かつ生活に支障があるような発作が続いているということであれば申請は可能ですが、認定されるかどうかは各自治体の判断によります。

自立支援医療制度

また、自立支援医療制度もあります。これは、心身の障害を改善・軽減するために通院や診療にかかった医療費を公費で負担する制度で、2006年に施行されました。

日常生活には支障がなくても、フルタイムで働くのは難しく経済的に余裕のない人は少なくありません。また、立て続けに登場した新薬は従来の薬に比べると高価で、健康保険を使っても3カ月で数万円の自己負担になります。経済的負担が大きい場合は、申請してみてはいかがでしょうか。こちらは「てんかん」と診断され通院歴があれば制度を利用できます。

これらの制度について詳しくは、主治医または役所の福祉担当窓口にお問い合わせください。

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松尾 健先生の詳細プロフィール
NTT東日本関東病院 脳神経外科・てんかんセンター 医長 松尾 健

NTT東日本関東病院 脳神経外科・てんかんセンター 医長

取得専門医・認定医

  • 日本脳神経外科学会専門医
  • 日本てんかん学会専門医

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