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認知症について - 診断と治療・予防など 病気を知ろう 医療特集 - メディカルiタウン


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医療特集

認知症について - 診断と治療・予防など

更新日:2016/09/07

認知症の診断と治療、予防のために今意識しておくことはどのようなことか。また、ご家族に向けたメッセージと今後の社会的な取り組みについて伺いました。地域包括ケアシステムの構築に向け、ICTを活用した新たな取り組みについてもご紹介します。

NTT東日本関東病院 神経内科 部長 吉澤 利弘

お話を伺った先生:

認知症の診断

認知症の診断では、MCI、加齢によるもの忘れ、せん妄・うつ病などの精神疾患、パーキンソン病などの神経変性疾患を含むその他の病気かどうかをまず鑑別します。認知症と診断された場合は「治療可能な認知症」かどうかを次に鑑別し、その後さらに変性性認知症、脳血管性認知症、その他の認知症のいずれかを判定します。変性性認知症の場合は、どの型なのかを判定します。この診断をする上では、日常生活の様子を知ることが一番重要となりますが、本人だけからの聞き取りは難しいことが多いようです。

外来を受診されるときには、必ず誰か身近にいる人が付きそうことをおすすめします。初診で本人だけの場合、次回来院されるときには、必ず一緒についてきてもらっています。

一般に、以下のような手順で診察が行われます。

問診

問診では、現時点で起きている困った状態についてだけでなく、患者の認知能力の変化を把握するため、年齢、仕事、現在治療中の病気、喫煙や飲酒などの生活習慣を含めた生活といった現在の状況と、学歴、過去の病歴といった過去の状況、また、いつ頃からどのような変化が現れたかといったことを尋ねます。これによって、現時点で起きている困った状態をより正しく認識でき、診断の助けとなります。

認知機能検査

問診後、診察室で容易に認知機能を検査するツールとして、長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)、精神状態短時間検査(MMSE)、時計描画テスト(CDT)などを行います。

血液検査

ビタミンの欠乏や甲状腺機能などを調べる目的で、血液検査を行います。

画像検査

正確な診断のためには画像検査も行いますが、段階的に実施するのが一般的です。

まず、CTやMRIを撮ることが多く、これで脳の萎縮具合や脳梗塞の有無を調べられます。「治療可能な認知症」であるかどうかも、ある程度見極められます。

アルツハイマー型やレビー小体型のような変性性認知症の可能性が高い場合は、次にSPECT(スペクト)という装置を用いた検査で、脳内の血流を調べます。アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症では、それぞれ特有の領域の脳内血流が低下することが知られており、診断に役立ちます。

専門的な医療機関であれば、βアミロイド沈着の有無を調べるPET検査ができることもあります。また、ドーパミントランスポーター・シンチグラフィ検査、MIBG心筋シンチグラフィという検査は、レビー小体型認知症の診断に役立ちます。

うつ症状・せん妄がある場合

うつ病の可能性がある場合は、精神科を紹介されることがあります。70代以降であれば、仮にうつ症状があっても、アルツハイマー型認知症、あるいはそれに合併するうつ病だということがあり得ます。うつ症状が、アルツハイマー型認知症の初期症状だったということもありますので、疑わしい場合は精神科の受診が重要です。

また、せん妄と言って、意識障害が起こり、頭が混乱した状態になっていることもあり、特に高齢者の場合、認知症と誤解されることがあります。入院すると、急な環境変化でせん妄を起こしやすくなりますが、興奮状態に陥っているだけならば、比較的短期間で治まります。

認知症の治療

薬物治療

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症の場合、脳内のアセチルコリンという神経伝達物質が極端に少なくなっているので、それを増やすような薬(アセチルコリンエステラーゼ阻害薬)を服薬します。残念ながら、脳の老人斑などの変性を元通りにしたり、失われた記憶を取り戻したりすることはできず、記憶障害の進行を遅らせることを目的とする薬です。

日本では長らく、ドネペジル(アリセプト®)という薬しかありませんでしたが、2011年からは、ガランタミン(レミニール®)、貼付薬のリバスチグミン(イクセロンパッチ®・リバスタッチパッチ®)という薬が発売されています。

また、同じく神経伝達物質のグルタミン酸の働きを高める薬(NMDA受容体阻害薬)であるメマンチン(メマリー®)という薬も登場しました。これは、他の3薬とはメカニズムが異なるので、併用ができます。

これらの薬を使うことで、認知機能が維持されている時間をより長く延ばすことができます。残念ながら根治に迫れる薬はありませんが、どの薬も一定程度の効果はあるので、副作用の有無を見ながら、症状に合わせて使ってみるのがいいでしょう。飲み薬が苦手な人は、貼付薬も使えます。

また、病気に伴って、徘徊(はいかい)、興奮、幻覚などの症状が現れる場合は、それらを改善する目的で、抗精神病薬、抗うつ薬、睡眠導入剤、漢方薬などを併用することがあります。ただし、高齢者へのこれらの薬の使用はなるべく少ない分量とすることが基本となります。

【関連】アルツハイマー型認知症の新規治療薬について(お医者さんに相談)を読む

レビー小体型認知症

なお、レビー小体型認知症では、ドネペジル(アリセプト®)のみが保険適用となっており、症状を改善する効果が期待できます。

【関連】昨今話題のレビー小体型認知症について(お医者さんに相談)を読む

リハビリテーション療法

薬物療法と併せてリハビリテーション療法を行うこともあります。精神科のデイケアを中心として、音楽療法、運動療法、絵画療法などを行っている施設もあります。

NTT東日本関東病院では、初期(発症から5年程度)の認知症に対して回想法と運動療法を組み合わせた「しあわせプログラム」というリハビリテーション療法を、週1回、全8回のコースで実施しています。

回想法とは、過去を振り返り、共感や受容的な対応をすることによって、精神の安定や認知機能の改善を図るものです。「しあわせプログラム」で行うのはグループ回想法で、患者さん5人が小グループを作って、そこにファシリテーター役の臨床心理士1~2人が入って、お互いに昔話をしてもらったり、あるいは昔の道具や写真を見て思い出してもらったり、戦争の体験談なども、あまり差し支えない範囲で語り合ったりしていくというものです。

回想法を終えた後は、運動療法士が入って、有酸素運動の指導をします。2カ月間かけて家族も方法を身に着け、自宅でも同じようなことをやってもらいます。

プログラムの開始前と終了後で長谷川式やMMSEで認知機能を検査をすると、認知機能が活発になってくる人たちもいます。しかしながら、脳の変性を元に戻せるわけではありません。それでも、認知機能が維持されている時間を少しでも長くするということがこのプログラムの目的です。また、こうしたプログラムに取り組むことで、精神的な負担が軽減され、介護者のモチベーションが向上することが大きなメリットになっています。

【関連】関東病院しあわせプログラムについて(お医者さんに相談)を読む

認知症の経過

アルツハイマー型認知症は、65歳以上で発症し、初期5年、中期5年、末期5年の大体10~15年の経過をたどり、最後は寝たきりになるのが一般的です。初期の早い段階で治療するほど、認知機能が維持されている時間は長く続きます。

一般に、65歳未満で発症する若年性認知症は遺伝要因が強く、進行が速いことも多いようです。40~50代で発症した人の場合、60代で寝たきりになるということもあります。

認知症の危険因子と予防

認知症には、いくつか危険因子が知られています。中には避けられるものもあるので、ある程度の予防に努めることができます。

例えば、アルツハイマー型認知症では、加齢、遺伝的素因(アポリポタンパクEε4を有することなど)が危険因子と知られています。さらに、促進因子として、高血圧症、糖尿病などの生活習慣病、運動不足、知的作業の不足、余暇活動や社会活動の不足なども知られています。

また、脳血管性認知症では、脳血管障害を起こす危険因子として、生活習慣病(高血圧症・糖尿病・脂質異常症)、心房細動、喫煙、過度の飲酒が知られています。

遺伝

認知症には特定の遺伝子の異常で発症する遺伝性の認知症の存在が知られていますが、頻度は多くありません。しかし一方で、遺伝的危険因子として「アポリポタンパクE多型」というものが知られています。

アポリポタンパクEをコードする遺伝子には、人によってε2、ε3、ε4の多型が存在します。このうち、日本では約10人に1人がApoε4を持っており、これを一つ有することでアルツハイマー型認知症発症の危険率が全くない人より約3倍程度に上がります。またApoε4を2つ持っていると、危険率はさらに上がります。しかしながら、Apoε4を持っていても発症しない人もいることが知られています。

親の世代がアルツハイマー型認知症を発症した場合、将来は自分もなるのではないかと心配になるでしょう。ですが遺伝を気にしてやみくもに心配するより、むしろ他の危険因子と考えられている、高血圧症・糖尿病・肥満などの生活習慣病の予防や改善に努めることを私はすすめています。予防には、社会活動性を保ち適度な運動を心がけるなど、健全な生活を送ることがとても大切です。

生活習慣病

生活習慣病がアルツハイマー型認知症を起こすメカニズムは、はっきりとは分かっていません。しかし、疫学調査(病気の原因と考えられる因子<要因>を設定し、その因子が病気を引き起こす可能性を、社会集団を対象として究明する統計的な調査のこと)から、中年期に生活習慣病があった人が将来アルツハイマー型認知症を起こしやすくなることが知られています。

糖尿病がある人は、高齢になってアルツハイマー型認知症やがんを起こしやすくなります。また、高血圧症も同様で、中年期からの血圧管理が重要です。アルツハイマー型認知症そのものの予防は難しいと思いますが、危険因子である生活習慣病は予防できます。

運動

運動は、認知症の予防に有効で、認知機能を向上させることができるという科学的根拠(エビデンス)が出始めています。ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動が有効と考えられていますが、できれば中年期のうちから運動習慣を身につけておくことが大切です。

社会活動への参加

人との関わりを保ち社会的な活動を続けることも、明確な科学的根拠はないながら有効だとされています。

高齢になってリタイアした人が、登下校時の子どもの見守りや、花の手入れなどのボランティア活動に参加している例もあります。また、囲碁クラブに通い続けるなど、趣味の仲間との関わりも続けるとよいでしょう。

一番の予防法は健全な普通の生活

将来自分も認知症になるのではないか、という不安は多くの人が持つものですが、大切なことはそれにとらわれず、危険因子を取り除いた普通の生活を健全に維持して、社会的にも活発でありながら、暮らしていくことです。これが認知症にとって一番の予防になるのではないでしょうか。

認知症患者の家族に向けて

認知症になった人は、周囲と自分との関係や過去と現在の出来事が混乱し、不安を抱きます。同じことを何度も尋ねたり、昔の話ばかり話したりして、支えている家族に負担をかける行動を起こすこともあります。

認知症と診断されて服薬治療中であれば、例えば同じことを尋ねる、意味の分からないことを言うといったことがあっても、あえて聞き流すようにすることも大切です。細かく指摘することで患者さんのストレスが増し、問題行動につながることもあるからです。

介護保険を活用する

認知症が進行すると、暴力的な言動や徘徊などの問題行動も出てくることがありますが、そのような場合は、精神科の介入が必要になることがあります。また、失禁などに対しては、介護事業者の手を借りるなどの手段が有効なことがあります。いずれにしても、介護保険はきちんと申請して活用することで、介護の負担が大きく軽減されます。

主な病院や認知症疾患医療センターには、「医療ソーシャルワーカー(Medical Social Worker:MSW)」が勤務しており、認知症に係わる様々なことのほか、介護保険を含む社会資源の活用についても相談に乗ってくれます。また、市区町村によって名称は異なりますが、「在宅介護支援センター」が設置され、電話相談を受け付けています。

全体的な生活環境を整えてあげることは、認知症の進行を抑える上でも大切です。人が係わることで、様々な意欲が出てくることも期待できます。

負担を抱え込まない

アルツハイマー型認知症など、進行性の認知症には残念ながら現時点で根本的な治療法はありません。しかし、前述したように現行でも症状の進行を遅らせる薬物はありますので、それらを使用しつつ認知症の人を支えるとともに、介護している家族を支えることが、それ以上に重要になってきています。

家族の方には、介護サービスの積極的な利用をすすめています。グループホームやショートステイなどを利用して、介護の負担を少しでも軽減するようにしてください。また、患者の家族会などでは介護の悩みを相談し合うこともできますので、参加されてはいかがでしょうか。

地域包括ケアシステムの構築に向けて

少子化で経済活動が縮小する中、認知症患者が増加することで、社会的・経済的負担も増大しています。慶應義塾大学の研究では、2014年に認知症の人の医療や介護で社会全体が負担したコストが、トータルで14.5兆円であったと推計しています。また米国では、既に心臓病やがんよりも、認知症にかかる社会的な経済負担が上回っているという報告もあります。家族の負担、社会の負担を軽減する政策が早急に求められています。

政府は、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を推進しています。

この中で、地域包括ケアシステムは、保険者である市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げていくことが必要とされています。

ICTを活用した新たな取り組み

エヌ・ティ・ティ アイティ株式会社、東日本電信電話株式会社、エーザイ株式会社は、在宅の認知症患者のケアにおける負担を軽減するために、2016年7月から、ICTを活用した新たな医療・介護における多職種連携事業をスタートしました(図2)。(吉澤先生は、このICTシステムのトライアルを東日本電信電話株式会社、NTTデータ経営研究所などとともに企画し、中心メンバーとして開発に携わられています)

このICTシステムは、適切なコンサルティングのもとに、在宅患者さんを担当するケアマネジャー、かかりつけ医、介護事業所のヘルパーなど、グループ全員が同じICT端末を持ち、情報共有をすることができます。単なる連絡帳のような機能ではなく、本当に問題があったときにはアラートが発せられて、チェックできるような仕組みです。こうした仕組みが広がることで、社会的・経済的負担の効率化に大いに役立つと期待されます。

認知症患者さんの在宅医療・介護のみならず、さまざまな疾病を抱える患者さんの在宅医療・介護にも応用可能かつ有用であること、さらに結果として今後ますます問題となるであろう介護費用負担の軽減にも役立つことが実証されたと考えています。今後は、これからの地域包括ケア実現のための社会インフラとして全国に整備されていくことを切に望みます。

図2 NTT東日本(株) 報道発表資料より

図2 NTT東日本(株) 報道発表資料より

吉澤 利弘先生の詳細プロフィール
NTT東日本関東病院 神経内科 部長 吉澤 利弘

NTT東日本関東病院 神経内科 部長

取得専門医・認定医

  • 日本神経学会神経内科専門医
  • 日本内科学会認定内科医・指導医

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