日本脳炎とは日本脳炎ウィルスによっておこるウィルス感染症です。日本脳炎ウィルスに感染している豚、馬、鳥類を吸血した蚊「コガタアカイエカ」が人を刺すことによって感染します。人から人への感染はありません。6~16日間の潜伏期間の後に、高熱、頭痛、嘔吐などを発症し、引き続き急激に光への過敏症、意識障害、けいれんを生じます。乳幼児、高齢者での発症では後遺症が残る確率も高く、致死率は20~40%と言われています。予防策は、日本脳炎ワクチンの接種、蚊に刺されない工夫です。
日本脳炎は1960年代頃まで年間数千人の患者を発症していました。しかし、マウス脳由来の日本脳炎ワクチンが1954年に開発、接種の勧奨が開始されました。その結果、発症患者は減少し、1990年代では年間10人未満の発症となりました。しかし、マウス脳由来の日本脳炎ワクチン接種後の急性散在性脳脊髄炎(ADEM)の発症が報告され、2005年に健康被害の認定を受け、積極的勧奨は差し控えとなりました。
ADEM発症のリスクが低いと期待される乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンが2009年に承認を受けました。2009年6月には第1期定期接種、2010年8月には第2期定期接種への使用が可能になりました。
積極的勧奨接種を差し控えていた2005年から2010年の間に4症例の日本脳炎発症の報告がありました。日本脳炎の発生状況は地域によって大きく異なります。(大部分は九州、中国、四国地方に発生しています。発生例のほとんどない北海道では予防接種は実施されていません。)近年、日本脳炎患者は少ないものの、ウィルス自体は依然として存在しています。これを機にご自身、ご家族の接種記録を見直してみてはいかがでしょうか。
積極的勧奨の差し控えの間に接種が遅れていた者への救済策がとられ、2011年度以降も、年齢超過児童への救済策と積極的勧奨年齢の拡大が計画的に行われる予定です。救済策についての詳細はかかりつけの医療機関、地方自治体にご相談するか、または厚生労働省のホームページ「日本脳炎ワクチン接種に係るQ&A」をご参照ください。